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悲劇のシンデレラを救うために
前世、生粋のオタクだった私も、この展開は予想出来なかった。
この世界は、私が嗜んできた転生物の小説や漫画の、どの物語にも該当しないからだ。
不可思議なことにこの世界には、令和の時代に廃れたはずの暴走族が日々縄張り争いを繰り広げ、肩身の狭い思いをしてるはずのヤクザが幅を利かせている。
裏社会情勢だけ、バブル期の日本みたい。
こんなに悪い奴らのさばらせて、警察は何やってんのって感じだけど、これで社会が成り立っているのだから不思議で仕方ない。
とにかく、物語が大きく動くまではあと14年ある。それまでに私が何とかしないと……。
大事なのは、ヒロインの壱華をどうにかして救うことだ。
一に壱華、二に壱華。三、四がなくて五に壱華。いいか実莉、生き抜くために壱華を第一に考えろ!
相川壱華、彼女はWeb小説「闇色のシンデレラ」の主人公であり、運命の荒波に翻弄されるヒロイン。
確か、運命の相手に出会うまでに、かなり酷い目に遭うんだよ。まずい、ストーリーがうろ覚えだから思い出さなきゃ。
「みのりちゃん、あそぼ」
ひとりきりになれるパパの書斎で頭を悩ませていると、ドアを開けて壱華がとことこやってきた。
壱華は早生まれだから、やっと4歳になったばかり。だけど整った顔立ちが圧倒的で、とんでもない美人に育つのは分かる。
しかも早生まれなのにもうひらがな読めるし、かなりの才女だったんだなと感じた。
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