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「みのり?かわいいなまえだね」
「ひぃ、かわいい……!守りたいこの笑顔……」
「だから全部心の声漏れてるって。独り言聞かれて恥ずかしい思いするのみーちゃんだからな」
胸を押さえてぎゅっと目をつぶる。いいよ別に、変人だと思われようが私には壱華という最大の理解者がいる。
とにかく今の私は憂雅くんという天使に出会えて元気100倍だ。まだ今日の任務をこなせてないから不安だったけど、何とかなりそうな気がしてきた。
「あ、力さんだ」
ほら、会いたかった対象が向こうから近づいてきた。いいね、追い風が吹いてる。中庭をぐるりと囲む廊下に、190cmはあろうかという背の高い男の姿を発見した。
板前姿のその男は、偶然出逢えた司水さんや憂雅くんとは違って、今日絶対に会いたかった人だ。
「力さん、見ーっけ!!」
「おわっ、お前……実莉か!?」
廊下を走り、力さんが曲がり角に差しかかったところで後ろから突撃して抱きついた。
力さんは荒瀬組本家の厨房係として働いているから、今日会えるかなって期待してたんだよね。
力さんはタッパあるから大人に見えるけど、実際はまだ19歳。黒帝のOBで、理叶よりひとつ前、六代目の総長だ。つまり黒帝の総長に理叶を指名したのがこの力さん。
たまに、理叶と光冴がよく利用してるバーや、黒帝のたまり場に遊びに来てくれるから知り合いだ。
「久しぶり力さん!元気してた?」
「実莉、場所を考えろ!」
優しくて頼もしい力さんだから怒られないと思ったけど、慌てた様子で無理やり引き剥がされた。
なんで?今まで抱きついても拒否されなかったのに。不思議に思って首をひねると、廊下の曲がり角の向こうに人が立っていることに気がついた。
志勇と司水さんだ。おかしいな、組長夫妻に壱華を紹介してたはずじゃ……。
「お前もロリコンだったのか……」
志勇は、私がいつか剛さんと出会った時みたいにドン引きしていた。
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