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司水さんはその隣でくすくす上品に笑っている。
「ち、違います!そんな顔しないでください若!」
力さんは手を大きく動かしてなんとか誤解を解こうと頑張って弁明していた。
「俺の周りには性的倒錯者が2人もいるのかよ、勘弁してくれ」
「だから違いますってば!俺は年上のエロいお姉さんが好みです!」
「お前の好みは聞いてねえんだよ」
「理不尽……!」
「あ?」
「な、なんでもないです」
志勇って性悪だよね。あらぬ勘違いを解くためにタイプを暴露した力さんに対し、圧力かけて黙らせるなんてThe 理不尽って感じ。
颯馬も憂雅くんの頭を撫でながら後ろでケラケラ笑ってるだけだし。まあ、助け舟出さない私が一番悪いけどね。
「実莉、お前もなんとか言ってくれよ。なんで急に抱きついてきた?」
「力さんに聞きたいことがあったから、追いかけたら勢い余って」
てへ、とぶりっ子みたいに笑うと力さんは盛大なため息をついた。
「なんだよ、それって俺が答えられる質問か?」
「“黒帝の参謀”って何?」
志勇と司水さんの登場は予想外だったけど、耳に入ったって困る疑問じゃない。今日、本家の人たちにそう噂されたのが気になっただけだ。
「お前の通り名みてぇなもんだよ。知らなかったのか?理叶と光冴が、黒帝の連中に実莉との関係性を訊かれてそう言ってたらしい。
安心しな、実莉は潮崎に守られてるから、直接害が及ぶことはねえよ」
「知らなかった。教えてくれてありがとう」
「おう、聞きたいことはそれだけか」
「うん、それだけ。あと個人的に力さんに会いたかった!」
「そうかよ」
力さんは質問に答えてくれた後、私の頭をわしわし撫でた。少し雑な撫で方だけど、大きな手で撫でられるとパパを思い出して安心する。
顔を上げると「元気そうでよかったよ」と笑いかけてきた。力さんは無表情の時は主張しない薄い顔だけど、笑うと塩系のイケメンが出現する。笑顔が素敵っていいよね。
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