309人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、実莉」
「何?」
いい流れだ、と心の中でガッツポーズを決めた時、壱華が手招いてきたから縁側へ近づく。すると、壱華は私の頭に手を置いて、花が開いたような可憐な笑顔を見せた。
「今度遊ぼう、最近ふたりきりの時間作れなくてごめんね。大好きだよ、実莉」
「うんうん!私も大好き!楽しみにしてる!」
ほら、壱華はやっぱり私の小さな異変に気がついてた。嬉しくって首がちぎれそうな勢いで頷きながらぴょんぴょん跳ねた。
颯馬には「頷くか跳ねるかどっちかにしなよ」とつっこまれたけど気にしない。だってこんなにも幸せなんだから、全身で表さなくてどうするの。
「あ?俺には大好きなんて言ったことねえのに」
「ぶっはは、兄貴まだまだみーちゃんには適わないね!」
志勇は思い切り顔をしかめ、颯馬はそれを見て腹を抱えて笑っている。まあまあ、そんな顔しないでよ志勇。
私の夢は、幸せそうな壱華と同じ空間にいて、いつか生まれくる壱華の子どもたちに囲まれて過ごすこと。
その夢は志勇がいなきゃ実現しない。いつかは私に向けられている壱華の愛情も全部譲ってあげるから、今くらいふたりきりでいさせてよね。
暗雲たちこめる運命の中で、夢すら叶わないかもしれない。その覚悟の中で私は生きてるんだから。
最初のコメントを投稿しよう!