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別れ
その頃は芳夫も女の所へは行かなくなっていた。マリアもすっかりタバコはやめていた。模範的な仲の良い家族になっていた。
「お父さん、お母さん。学校を卒業したら修道院に入ります」
キリスト教の教育をした事もなかった。なのに英介は自ら教会へ通い洗礼を受けた。やはり神の子だったのだと改めてマリアと芳夫は思い知らされた。マリアと芳夫は神に感謝を捧げ英介を送り出した。
1年後、英介は修道院を追い出され帰ってきた。夜中にこっそりタバコを吸い、ボヤ騒ぎを起こしてしまったのだ。英介が生まれてからはタバコは吸わなかったマリアだが、お腹にいた時に吸っていた。胎児の時に既にニコチン中毒になっていたのではとマリアは悔やんだ。
帰ってきてから英介は仕事を探そうともせず、部屋に閉じこもっていた。このまま引きこもるのではと心配していたが、ある時から頻繁に夜出かけるようになった。
「僕引っ越します。マンション買って貰ったんで」
突然の事にマリアと芳夫は言葉を失った。英介の話によると、英介は人妻相手の出張サービスの仕事を立ち上げたのだという。
「世の中には夫に相手にされず寂しい思いをしている人妻がたくさんいます。そんな可哀想な人たちを救ってあげたいのです」
「そのマンションって……」
「お客さんが買ってくれました」
「いや、そんな事はダメだ。すぐにやめなさい!」
芳夫は強く否定した。
「お父さんだってしてたじゃないですか」
同級生の母親と付き合っていた事を指摘され、芳夫は何も言えなくなってしまった。
そうして英介は出ていった。その後マリアと芳夫はお互いを責め、言い争いの日々を送り、別れた。
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