問い

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問い

 新月の夜、音もなく白い翼を羽ばたかせ天使が舞っていた。 「恵まれた方、あなたは今夜神の子を身ごもるでしょう」  天使はある女の前に現れた。 「は? 何それ」 「あなたは救世主を産み育てる恵みを与えられたのです」 「無理無理。生活するのも精一杯なのに、子供なんて育てられない」 「夫と協力をして……」 「無理無理。あの人ギャンブル依存症で借金まみれなんだから」 「子供が産まれたら変わります」  天使は強行し女を身ごもらせた。しかし夫はギャンブル依存症の上に酒乱であった。女に暴力をふるい、あっけなく女は流産してしまった。  そして、とある夜。 「恵まれた方、あなたは今夜身ごもるでしょう」 「それは有り難い!」  女は喜んだ。女は細心の注意を払い子供を育んだ。そして出産の時がきた。 「元気な赤ちゃんですよ」 「なら高く売れそうね」  赤ちゃんは母に抱かれる事なく連れて行かれた。何処かの金持ちの養子になるのか、大富豪の子供の治療に使われるのかは分からない。しかし女は大金を手に入れ満足気に微笑んでいた。  天使は夜空を彷徨っていた。 「神よ、私は誰に子どもを託して良いのか分かりません」  託した子どもがことごとく救世主として成長しない事に、天使は困惑していた。 「まだ世界は救世主を必要としていないのでしょうか。だとしたら喜ばしい事なのですが……」  神からの応えはなかった。仕方なく天使は空へと舞い上がった。神の子を託す女の元へと。 〈終〉
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