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奇跡
マリアが芳夫と出会ったのは1年前、町の婚活パーティーでの事だった。お互い両親に無理矢理参加させられた。まだ結婚なんて考えていなかった2人は会場のすみっこでもくもくと料理を食べていた。そこで何となく会話をし、思いの外気が合い付き合うようになった。
芳夫は宮大工だった。神社仏閣を巡るのが趣味だったマリアにとって最適な相手だった。休みの日は2人で参拝にでかけた。神聖な気持ちになった2人が色っぽい雰囲気になる事などなかった。
しかしそろそろそんな事もあってもいいかもとマリアは思い始めていた。恋愛映画やデートスポットへ誘ってみたりした。しかしその頃から芳夫から連絡が来なくなり、マリアからのメールに返信をくれなくなった。
きっと嫌われてしまったのだ、汚らわしい女だと思われてしまったのだ。そう思いマリアは諦めようとしていた。しかし芳夫ほど話の合う人は未だかつていなかった。2人で訪れ御朱印をいただいた御朱印帳を眺めてはため息をつく毎日を送っていた。
「本当に芳夫さんと結婚できるのかしら……」
期待半分、諦め半分でいた時だった。
ピンポーン
チャイムが鳴った。
「マリアさん、僕です」
芳夫の声だった。
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