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マリアはすぐに玄関の扉を開けた。そこには誠実が服を着たような好青年、芳夫が立っていた。
「信じられないかもしれませんが、僕のところへ天使がやってきたのです」
「芳夫さん、私のところへもです」
「ならば、あの話は本当なんでしょうか」
「私もまだ半信半疑なんです」
「でも、きっと信心深い僕たちにならあり得る話です。マリアさん、僕と結婚してください。2人で子どもを育てましょう」
「芳夫さん……」
話を聞くと、芳夫は山奥の古いお寺の修復に泊まり込みで行っていたそうだ。携帯は圏外で使えなかったという。
「連絡できなくてごめんなさい。でも修復が終わって帰ってきた途端天使が現れたんです。これも仏様のお導きですね」
「本当に」
そうして2人は結婚した。マリアは芳夫の住む古ぼけたアパートへと引っ越した。何かあってはいけないからと仕事も辞めた。2人は慎ましやかに新生活をスタートさせた。
「ところで、病院へは行ったんですか?」
「病院?」
「産婦人科ですよ。子どもを授かったんですから」
マリアには何の自覚症状もなかった。つわりもまだない。
「そういえば、いつも眠たいのは妊娠のせいなのかしら」
妊娠すると眠くなるという。でも前からそうだった気もする。
「あの、もしもあのお方が天使ではなく、狸とか狐で、私たち化かされたのだとしたら……離婚ですか?」
ふとマリアは不安になった。もしかしたら自分たちは妖に化かされたのではないだろうか。自分は妊娠してないのかもしれないのでは、と。
「もし化かされて騙されたのだとしたら、今度は本当に僕たちの子どもを作りましょう」
「……はい」
芳夫の言葉に安心し、マリアは産婦人科を受診した。
「芳夫さん、3ヶ月ですって。エコー写真ももらってきました」
病院で撮ってもらったエコー写真を芳夫に見せた。
「これが僕たちの子どもなんですね。やっと実感が湧いてきました。名前を考えなきゃいけませんね」
「はい」
次の日芳夫は姓名判断の本を何冊も買ってきた。それから毎晩2人で名前を考えて夜を過ごすようになった。
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