第一話 博士と助手

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第一話 博士と助手

 日本の某所――、森林奥深くにある怪しい館――、そこはとある研究者の実験場である。  いかにも【マッドサイエンティスト】が根城にしてそうな館ではあるが……、そこには【世界平和】に関する研究を行っているとある博士が一人の助手とともに住んでいた。  その博士の名は――、  【リズレット=ガブリエル(Lislet=Gabriel)】――、天使の名を持つ、その姿も天使そのものである現在16歳になる少女であった。  彼女は金髪碧眼……、儚げな印象を受ける小柄な美少女であるが、しかし、その容貌に反して数々の博士号を獲得し――、生物から機械……、様々な神秘に至るまで深い知識を有する、現代の奇跡とも呼べる天才であった。  ――そして、今日も彼女は自らの目指す究極の課題【世界平和】はなり得るか? ――どのようにすればなり得るのか? を研究しているのである。 ◆◇◆ 博士「ふむ……、助手くん――、とても困ったことになってしまったぞ!」 助手「はい? 何がどうしたんですか? リズ博士?」  その日、リズレットはいつものように得体のしれない研究に勤しんでいたが、不意に助手を呼んでそういったのである。  リズレットは心底困った表情で目の前の助手を見る。その視線を受けて助手――、【獅子戸亮(ししどあきら)】は何事かと訝しげな顔をした。 博士「うむ……これは、進めるべき研究に大きな障害となる話だ」 助手「それは……いったい?」  リズレットは小さくため息を付くと、助手に向かって深刻な表情で言ったのである。 博士「最近の、この暑さのせいで、完全に頭が煮詰まってしまった」 助手「……、最近とみに暑いですからね」  リズレットは更に深刻そうな色を強めて言う。 博士「助手くん! この日本の暑さはどうにかならないのかね?! このままでは研究を続けられないぞ!」 助手「う~~ん、気象を操作してみるとか?」 博士「それはいいアイデアではあるが――、根本的な解決にはなり得ないだろう? 何より――他人(ひと)に迷惑をかけるかもしれない」  深刻そうに考え込むリズレットを見た助手は、そばにある自分の鞄を開けて中を探りながら言った。 助手「……それならば、実は俺にいいアイデアがあります!」 博士「うむ? いいアイデアだと?! 人に迷惑をかけないようなものか?」  リズレットのその答えに助手は不敵に笑いながら頷いた。 助手「無論ですとも! 何より人の役に立つかもしれないことです!」 博士「おお! 助手くん! そんな解決法があるとは! さすが助手くんだ!」  嬉しそうに笑うリズレットに助手は鞄の中のあるものを取り出して見せた。 助手「さあ! リズ博士! これを着ればすぐに涼しくなりますとも!」 博士「……?」  助手が手に持つそれがなにか、リズレットは初め認識ができなかった。 博士「……それは何だね? 紐?」 助手「ははは! 何を言ってるんですか?! ココにしっかり布があるでしょう?! これはいわゆる水着なのです!」  リズレットはその助手の言葉を聞いて少し首を傾げた後、やっと【その事実】を理解して頭に怒りマークを浮かべた。 博士「助手くん! 何だねその申し訳程度の布は!! それはいわゆる――【マイクロビキニ】ではないのかね?!」 助手「そのとおりです! サイズはリズ博士にピッタリ合わせてあります!」  誇らしげにのたまう助手に、リズレットは頬を引きつらせながら怒りの声を上げる。 博士「なぜに助手くんが私のサイズを理解しているのかはこの際おいておいて――、そんな物をつけたら色々はみ出るだろうが!!」 助手「ここには俺以外いないので問題ないかと……」 博士「問題ばかりだよ助手くん! 何を考えているのかね!!」  リズレットはこめかみに指を当てて怒りを抑えつつ言う。 博士「……そもそも、だ、君は今いくつだね?」 助手「今年25歳になりました」 博士「……その大の大人が――、今年16歳……、それも平均より幼い容貌の私を、そういう目で見ていいと思っているのかね?!」  そのリズレットの言葉に、助手は真剣な表情で答えた。 助手「愛に年齢など関係ありません!」 博士「そう言うなら、なぜ助手くんはうしろ手にカメラを隠しているのかね?!」  そう――、今助手はカメラを手にしていた。 助手「……色々、今後の参考にしようかと」 博士「なんの参考かね?! 人を勝手に参考資料にしないでくれたまえ!!」  怒るリズレットに助手は悲しげな表情を向ける。 博士「助手くん! 捨てられた子犬のような悲しい目をしても無駄だ!」 助手「……駄目ですか?」 博士「当然だよ助手くん……、それは没収させてもらおう」  そう言うとリズレットは助手の手からカメラを奪い取った。少し不満そうな顔でうつむく助手。 博士「いいかい助手くん。大人の君が私のような【研究ばかりの頭でっかちで幼児体型の子供】を相手にしていてはいけないよ?」 助手「それは明確な間違いですリズ博士……」 博士「む?」  助手は真剣な表情でリズレットを見つめる。すこし顔を赤くしながらリズレットは彼の言葉を待った。 助手「リズ博士は――、小さいですがおっぱいは膨らんでいますし、腰のくびれもしっかりあって、何よりその美しい大きな尻がリズ博士の美しさを際立たせています! そんなものは幼児体型ではありません!」 博士「もっとこう……別に言うべきことがあるだろう?! 助手くん!!」 助手「ふむ? 言うべきこと?」  助手はリズレットを真剣な表情でしばらく見つめた後、はっきりと言いきった。 助手「リズ博士の尻が触りたいです」 博士「……わかった。助手くんは本当の馬鹿なんだね?」  リズレットはため息をついて疲れた様子で呟く。 博士「助手くんは……色々性格に難があるが……、助手としてはとても優秀だからね。困った話だよ……」 助手「お褒めに預かり光栄です!」  嬉しそうに笑う助手を疲れた目で見つめながら再びため息を付くリズレット。 博士「……助手くん。そんなに私が好きかね?」 助手「無論……、リズ博士と添い遂げることこそ我が全てです!」 博士「……私が国営研究室から独立して一人になった時、君だけは私についてきてくれたが……、私そのものが目当てだとは思わなかったよ」  リズレットは少し頬を赤くしながら言う。 博士「いいかい助手くん。そんなにガッツイていると、私に本当に嫌われてしまうよ?」 助手「ふむ……」 博士「……私は別に――、助手くんのことが嫌いではないからね」  そう言ってうつむくリズレットに、助手は今まで以上の真剣な表情を向けて言った。 助手「結婚しましょう……リズ博士」 博士「……それがダメだって言ってるんだが?!」  今日もこうして研究所には、リズレットの叫び声が響いている。  果たして彼らは――、真なる【世界平和】へと到達出来るのであろうか?  ――なお、マイクロビキニは助手が全力土下座したら着てくれたようである。
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