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死にたがりの白鬼は
「今日もまた死ねなかったなぁ……」
草むらで眠り、目覚める度にそう呟く白髪の青年『白夜』にとっての死は、最早我々人間が抱くそれとは少しズレが生じている。
彼にとってこの言葉は起床の儀式のひとつのようなもので、闇をも照らすその白銀の髪を乱雑に掻き乱し、先程から静寂な闇夜が続いていることにため息をついた。
「アオネコー? たく、お前は働き者なんだから。
俺のお休みはもうおやすみってか? 全く寒いシャレだ」
彼が探しているアオネコとは、言葉通り真っ青な毛皮を持つ猫であり、白夜にとってかけがえのない相棒なわけだが、アオネコが姿を消すと白夜に仕事が舞い込んでくるため、白夜はペチペチと頬を叩いて気合いを入れ直す。
事実そんなことをしていると、どこからともかく手紙が飛んでくる。
それを確認した白夜は隣に置いていたトランクケースから学生服を取り出し目視すると、次の瞬間には学生服にその身を包んでおり、少し若返った様子でどこから見ても高校生そのものに見える。
「あー、あー。ま、こんなとこだろう。次の仕事先は翡翠高校か。果たしてどんな輝かしい宝石が見られるのかな?」
最初の気怠げさは何処へやら。
白夜の中には『美しいものが見たい』という欲望に転移しており、心驚かせながら、空間に扉を生成し姿を消す。
姿を消した白夜の白銀の髪には透明の一対の角が隠されており、月夜に照らされて独特な輝きを放っていた。
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