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いじめ社会の行く末は?
夏も終わりを告げ少し肌寒くなってきたこの日、一人の女子生徒が高校の屋上でぼんやりと部活動で賑わう校庭を眺めていた。
「どうして……どうしてこんなことに」
ここ翡翠高校に通う斎藤スミレの瞳には生徒の活気は映っておらず、ただただ自身に降りかかっている災難と、これから続くであろう絶望にその色を濁らせていた。
学校へ来れば、クラス中からの無視は当然。時には物を隠され、『汚い』と水をかけられる。
担任に助けを求めても担任は虐めを否定し解決に至らず、それどころか『担任に密告した裏切り者』のレッテルを貼られ虐めはどんどん加速し、最早誰にも止められないところまで来てしまった。
始まりなんて大層なものではない。スミレの場合も同様で、きっかけは女子グループが作ったラインでのやり取りだった。この日も歌番組の感想をグループ内で言いあっていたのだが、スミレは家族からの頼まれ事でそれに参加できずにいた。
そう、ただそれだけ。
それが女帝と呼ばれている美咲の癇に障ったようで、翌日小さな無視から始まり、日が経つごとに人の邪念は膨れ上がり留まることを知らなかった。
「でも、それも今日で終わり…… このフェンスを越えれば全て終わり」
スミレが目の前に広がるフェンスを乗り越えようと手を伸ばした瞬間、心地悪く生ぬるい風がふわりと頬を撫でた。
「内心生きたいと思っているのに、自ら死にに逝くなんて……実にもったいない」
「え⁉」
邪魔が入らないように屋上へつながる扉の鍵は締め、屋上には誰もいないことをしっかり確認したはず。
それなのに突如響いたその声に驚き振り返ると、そこには学生服をラフに着崩した白髪の男子生徒が笑顔でこちらを見つめていた。
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