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「それではダメだ。お嬢さん、折角の機会だ。教えてあげよう。運命というのは人に委ねるものじゃない。そう、気持ちを積み重ねて作り出すものなんだ。
僕が与える加護はそのきっかけにすぎない。それを生かすも殺すも君次第というわけだ。
……改めて聞くよ? 君に、運命を変える覚悟はあるのかな?」
「……あります」
「グッド」
スミレが今度は間髪入れずに答えたことに白夜が満足気に頷くと白夜の足元から突風が吹き荒れ、スミレは咄嗟に顔を手で覆う。
突風が収まりゆっくりと目を開くと、そこには白い角を生やし、白と黒でできた洋風な着物を着込んだ白夜が立っており、言葉を失った。
「あ、驚かせちゃったかな? 僕は、白鬼の白夜。この姿が僕の正装だ。これから行う運命の儀式には欠かせないね」
「儀式……? え、私の事を助けてくれるんじゃないんですか?」
「え? ちゃんと僕の話を聞いてた? 助かりたいなら自分の力で道を切り拓くしかないんだ。そうでなければそんな未来はゴミクズでしかないからね。まぁ、僕が加護を与えることでそのお手伝いをすることはできるけど…… そして僕はこうも言ったはずだ。僕がしているのは慈善活動じゃないってね」
「じゃあどうすれば……」
白夜は、細長い息を吐くとスミレの顔を覗き込み、ニタッと笑った。
「生き残るには、女神と悪鬼の加護が必要だ。君の強い思いがこの僕を現世へ呼び寄せた。つまり、君は既に悪鬼の得ていることになる。だが、君は女神の加護をまだ持っていない。だからこれで女神の意思を問うとしよう」
白夜の視線を受け、アオネコは自身の顔を撫でると、その姿を蒼く澄んだコインに姿を変え、それを白夜はひらひらと揺らす。
「コイン……? 表裏を当てるギャンブルでもするんですか?」
「ギャンブル? 違う違う違う。これはそんな低俗な物じゃない。
言ったでしょ? 女神の意思を問うって。このコインにはアオネコを通して女神の意思が宿ってるんだ。
君にはこれから全てを賭けて『ベット・ユア・ライフ』という神聖な儀式をしてもらう。
それで女神の加護を得られるのであれば、僕の力『奇跡の加護』を惜しみなく君にあげよう。
このコインを投げて、表の女神像を出せたらクリアだ。君はただ一度のトスで、これから女神と接見する。ふふ、いつ考えても羨ましいな」
「ベット・ユア・ライフ……」
静かにコインを白夜から受け取り、スミレはまじまじと表裏を交互に見つめる。その様子を白夜は興味深そうに見守るのであった。
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