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暇つぶしにスマホをいじっていたら、心霊話のサイトを偶然見つけた。
怖い話は嫌いじゃないので覗いてみたら、自分が体験した心霊現象を語るという内容で、二つ三つ投稿を読んだが、どれもどこかで聞いたような話ばかりだった。
たいしたサイトじゃないな。
すぐに見切りをつけて閉じようとしたら、たまたま最新の話が更新された。
それだけもう一本読んでみよう。そう思い、目を通したら、その内容は読んでいるだけで背筋がゾクリとするものだった。
さっきまでの本当かどうかも判らないものとは違う。この人の体験は間違いなく事実だ。
何故かそう確信し、サイトにブックマークして、以来、ちょくちょく訪れては、その人の投稿がないか確認している。
でも、その人がサイトに投稿することは稀で、空振りの確立の方が多かった。
なのに先週から、やたらとその人の投稿が多くなった。
やはり、どの投稿も身震いするような話ばかりで、怖ければ怖い程胸を躍らせていたのだが、今日の投稿に気になる一文を見つけた。
その人は、普段、個人情報が特定されそうなことは書かない人なのだが、今回の投稿には、この一週間程怪奇現象に見舞われ続けたのは、とあるイベントに参加するため、普段の生活圏とは違う土地に来ているからではという一文が記されていた。
その、参加するというイベントの名前に、俺は自分の目を疑った。
この辺りでは大々的に行われる地元の祭り。今年は市政何十周年を記念して、本祭の一週間ほど前から数多のイベントが開催されていた。
投稿者は、祭りが終わるまで出張として俺の地元に来ていたのだが、投稿内容によると、怪異の発生率がとんでもないとのことだった。
ようやく仕事が終わり、あの土地を離れることができて安堵している。そう締められた投稿に、俺は釈然としないものを感じた。
生まれてからずっとここで暮らしているけれど、怪奇現象に遭遇したことなんて一度もない。ここは、この人が言うような土地じゃない。
きっとこの人は霊感が強すぎて、何かがあるとしても、普通に暮らしていたら気づかない程度のことまで感じ取ってしまうのだろう。
自分の地元をこんなふうに言われるのは癪だが、心霊体験ばかりしている可哀想な人の訴えだ。聞き流そう。
そう、思っていたのに。
この投稿を目にして以来、今まで見え買ったものが数多見えるようになった。しかもそれは俺だけでなく、家族や友達なども同様らしい。
一人の強い霊感の持ち主が来たことで、今まで普通レベルの霊感の人間には見えなかったものが具現化してしまったのだろうか。
この日から、俺はあのサイトの記事を読まなくなった。だって、わざわざネットで怖い体験なんかしてなくても、俺の日常が、恐怖まみれになってしまったからな。
心霊サイトの投稿…完
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