試供品

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 毎日が楽しい。相変わらず家と会社の往復だけれど、好きな人に会えると思えば苦痛じゃない。彼氏となった先輩とは毎日のように会社帰りに待ち合わせて、おしゃべりを楽しむ。  ただ社内恋愛はバレないようにと気遣うのが疲れる。それでも付き合っていることを知っている同僚から、お昼休みは質問攻めに合う。結構プライベートなことを聞いてくる。同僚の意外な一面を見た気がして、居心地が悪い。正直なところ、彼との関係は、一緒に食事をするくらいで、キスもまだといってもなぜか信用してくれない。世の中のカップルはどうなんだろうと漠然と考える。  その夜、同僚の質問を考えならが、一行日記を開いた。 『先輩とキスしてみたい……かも』文字にしてしまうと照れ臭い。日記には本心が出るとは聞くけど、恥ずかしさのあまり、手帳をサッと閉じた。
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