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しかし、おじ夫婦の実子からひどくいじめられ、殴る・蹴るの暴行を毎日受けていた。夫婦は五歳の文哉を守ろうとせず、すでに高校生だった実子の「こいつが俺に「喧 《けん>嘩くか》を売ってくるんだ」という言葉を信じた。
言葉での暴力もあった。何より「殴るぞ」と十八歳の青年に「脅された文哉は、彼のパシリをさせられたり、万引きなども無理やり、やらされてきたのだ。
ある日、大学生になった長男は遊ぶ金欲しさに文哉を呼びつけた。おじ夫婦の金庫の中にある現金を盗んでくるように命令したのだ。
文哉はいやがったが頬を打たれ、命令を聞くしか選択肢がなかった。そして金庫の中にある現金を手にしている姿を、おじ夫婦に現場を見られてしまったのだ。
結果、「盗っ人」は家から追い出された。親戚のうちをたらい回しにされた最後に行き着いた場所が養護施設である。
運の悪いことに劣悪な環境である養護施設に当たってしまった文哉は、さらに年上の男子からいじめられ、中学を上がる頃には底なしの井戸のように暗い目をして いた。学校でも不良たちから目をつけられ、いじめられていることに我慢ならなくなった文哉は、いじめっ子を威嚇するために椅子を窓へ向かって投げたのだ。
そうして文哉は警察で事情聴取を受けることになった。
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