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1 双神祝福の愛され?王女
ルネドニア王国の運命をつかさどる双神リュクシスとドルナスに見守られ、王族はこの世に生を受ける。
「──お生まれになりました! 王女さま、王女さまにございます!」
元気な産声をあげる赤子を抱いて、宮廷女医が垂絹から姿を見せた。
父となった王は安堵の笑みをこぼし、側近たちの祝辞がひととおり述べられたあと、彼らは一斉に大窓を振り返った。
そこに立った神官団は、真剣なまなざしで空を見上げていた。
誕生したばかりの王族の赤子に双神から授けられた祝福は何か、この瞬間の空の色、風の流れ、雲のかたちを祝福鑑に照らし合わせる。
やがて、結果が告げられる。
「曙色に染まり留まる薔薇型の雲──王女殿下の祝福は、まさに《溺愛》にございます」
誰からも愛される一生を送るというたぐいまれな祝福に、その場にいた者たちはそろって感嘆の声をあげた。
最も幸運な祝福を授かった王女はラディナと名づけられ、恵まれた環境ですくすくと成長していった。
そうして十八歳となったいま、ラディナは美しい容姿と洗練された挙措、気品ある人格を兼ね備えたすばらしい王女として、国内外で広く褒めそやされている──のだが。
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