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「またソレ着るのか」
「ええ。とても気に入ってるの。
このボリュームの出し方、すごく私好みだもの。
ブロードかと思ったら、タイプライターとはね。
発想が自由で良いわあ」
「君の正体を知らないからだろ。
もしアパレル業界者だと判ってたら。
イメージから離れ過ぎて。そんな安っぽい生地使わない」
会話しているのは袴田夫婦。
アパレル業界では老舗ブランドの現オーナーで。
夫の方はデザイナー出身の婿入り。
妻は前オーナーの一人娘だ。
もうソコソコいい年齢なのに。
ブランドの看板として、普段から磨き上げている姿は煌びやか。
大きな鏡の前で。
亜麻色に染めた髪を結い上げ。
サファイアの金細工ピアスとネックレスを着けている。
スキニージーンズとブラウスと言うシンプルな服装なのに。
少しベージュ掛かった色のブラウスは。
アクセサリーに負けていない。
襟が大きくふくらませてあって。
七分袖の先は絞ってメリハリが付けてあり。
前身ごろは、中心を少しズラして比翼仕立てにしてあって。
それがまた生地に陰影と光沢を作っている。
もしシルクジョーゼットだと言われたら、信じてしまいそうだ。
「それが大事なのよ。
ブランドとして品質は当然確保するわ。
でもイメージは自由でなくちゃ。
特に今度立ち上げるハイブランドはね。
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