1. 朝の衝撃

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1. 朝の衝撃

「……ん、……んんっ……」  何度目かの携帯アラームをやり過ごした後、亜里沙はようやく目を開けた。いつもならとっくに「早く起きなさい!」と母の声が聞こえるはずが、今日は何の音沙汰もない。代わりに聞こえる奇妙な物音に彼女はそっとベッドを抜け出した。 「……お母さん? どうしたの? 何して――」  リビングに足を踏み入れた瞬間、亜里沙は驚きのあまり硬直した。目に飛び込んできたのはとても大きなニワトリで、それはバッサバッサと羽を動かしながら、ラジオ体操のような動作をしている。  亜里沙が立ち尽くしていると、そこに父、茂もやってきて、持っていた新聞をポトリと落とした。茂は何度も瞬きを繰り返しながら、これが現実であるかどうかを疑っている。すると二人の存在に気付いたのか、ニワトリがこちらに振り向いた。緊張する二人とは逆に、それは慣れた調子で話しだす。 「あら、亜里沙もお父さんもそんな所に突っ立ってどうしたの? 亜里沙、お母さんが起こさなくてもちゃんと起きれたのね。毎日こうだったらいいんだけど……」  瞬間、混乱は更に深まった。何故ならその話し方や声色が母である宏美に似ていたからで、さらに話の途中、顎がクイっと持ち上がる独特な癖は、まさに母の仕草そのものである。そういえばニワトリが母愛用のエプロンを身につけている事にも今さら気づく。 「……うそ。お母さん、なの……?」  亜里沙が恐る恐る尋ねると、ニワトリはあっさり「そうよ」と頷いた。それから少し遠くを見つめたかと思えば、すぐに視線を二人に戻し、更に言葉を付け足してくる。 「実はね、私はニワトリ星人なの。ずっと人間のふりをしていたけれど、もう偽るのが辛くて……」
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