1. 朝の衝撃

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 そう打ち明ける様子を二人は茫然となって聞いていた。その目は大きく見開かれ、口は半開きで、頭の中では「ニワトリ星人」という言葉が大きく反復している。あまりの衝撃に、それまでの現実がグニャリと歪んで見えている二人だが、対照的に母であるニワトリはすっかり開き直ったようで、「人間の体は窮屈だ」だの「唐揚げを作るたび実は憂鬱だった」だのと、ペラペラ喋り続けている。  ところがそこで正気に戻ったのか、茂が急に声を荒げて怒鳴り始めた。 「ふざけるなっ! よくもこんなっ……! ニワトリ星人だと!? お前はオレを騙していたのかっ!」 「あら、騙してたなんて人聞きの悪い。聞かれなかったから言わなかっただけよ。それに今打ち明けたんだからいいじゃない」 「いいわけないだろ! こんな気味の悪い奴だって知っていたら一緒になんてならなかった! 結婚詐欺もいいとこだ!」 「まあ、それを言うなら私だって、あなたの天然パーマのモジャモジャ頭が気に入ったから結婚したのに、今やそんなにハゲ散らかすなんて……。詐欺っていうならあなたもよ!」 「……っ、離婚だ! オレは家を出る!」  そう言うと、茂はいったん自室へ引き返す。その後、荷物を抱えて出てくると、宣言通りにすぐに家を出て行った。 「……えっ……」   亜里沙は混乱しきりだった。こんな状況では無理もない事だが、半ばショックも入り混じっていたのは、父が自分など見向きもせず、連れて行く素振りさえ一切見せずに出て行ったからだ。残された自分はこれからどうすればいいのか、先を思うと漠然とした不安にクラクラ眩暈が起きてくる。すると、母がまるで何事もなかったように普通に声をかけてきた。 「ほら、学校遅刻しちゃうわよ! 早くご飯食べちゃいなさい! パン焼くけど、いつも通り2枚でいい?」  促されるままテーブルに着く。朝食の皿にはウィンナーと、きれいに焼かれた目玉焼きが乗っていた。
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