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何億年もの時空の彼方に
世界を構成しているのは「魂」であって、時間の中に紡がれてきた「記憶」である。
今を「今」たらしめているのは過去と未来が繋がっているからこそであり、時間が線になっているためである。
かつて星が生まれる前の世界では、「魂(ライフ)」と呼ばれる元素は存在していなかった。
過去は未来と呼ばれる概念は存在せず、ただ、茫漠とした今だけが、世界に横たわっていた。
いつ、どこで、どうやって「ライフ」が生まれたのかはまだわかっていない。
ただ、確かなのは、ある日を境に、時空が揺らぎ始めたということだった。
この揺らぎは“アポトーシス(時空の断絶)“と呼ばれ、瞬く間に宇宙全体に浸透することになった。
時間を追うごとにこの揺らぎは拡大していき、やがて、ライフを生み出すためのきっかけを、何億年もの時空の彼方に届けることになった。
アポトーシスの中心には、時空の揺らぎによって生じた“亀裂”が入っており、物質と反物質と呼ばれる概念が生まれたのもこのためだ。
宇宙が誕生した直後、大量の物質と反物質が作られた。
そして物質と反物質はお互いにぶつかりあい、対消滅して消えた。
しかし、そこに何らかの「わずかなゆらぎ」が起こり、10億分の1程度の比率で物質のほうが多くなった。
そのため、対消滅した後も10億分の1程度の物質が残ることになり、星や銀河が作られた。
10億分の1の違いを生んだ「わずかなゆらぎ」とはどのようなものだったのか。
現時点ではまだわかっておらず、今も世界中の科学者たちが素粒子、量子、物理に関するさまざまな分野でその謎を追いかけている。
ただ、確かなのは、ライフには「未来」を形作ることができる“可能性”を秘めているということだった。
そして、そのライフの源にある『ブルーホール』と呼ばれる亜空間は、世界の「壁」の内側に存在すると言われていた。
そこは、肉体を持たなくなった人間の魂が集う場所でもあった。
天国、天界、——あの世
呼び方は様々だが、人は死後、そこに行くとされていた。
行方不明になった少女、日向埜光は、ひょんなことから、その「場所」に行くことになり——
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