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違うってことは……これはプライベートの誘いということなのか。
天使係の仕事ではなく、個人的に俺を誘ってくれた?
どうしてこんな俺を誘ってくれたんだ……。
不思議そうに首を捻っている俺を見て、星羅は笑った。
「どうしたの? 私が同期の西原君をご飯に誘ったらダメなの?」
「いや……だって普段はあんまり話さないし……急だったから」
「西原君いつも忙しそうだから、なかなか声かけられなかっただけ。今日はチャンスだと思って、誘っちゃった」
嘘だろ……今日俺を誘ったのは、素の星羅の判断だというのか。
ちょっと信じられないけど……星羅がそう言ってくれてるんだから素直に喜ぼう。
俺はニヤケ顔のまま「ありがとう」と一言言って、改めてビールを口にした。
「おお、いい飲みっぷり! どんどん飲んで! これ経費で落とせるから」
「そうなんだ、さすがまもる課だな」
「私たちの特権だね」
「……でも経費で落としたら、この飲み会は仕事ってことになるんじゃ」
「まあ細かいことは気にしない!」
何だよと言いながらも、お通しの枝豆で一杯目のビールが終わりそうになる。早くもアルコールが回ってきたのか、気分が良くなってきた。
結局仕事の要素も孕んでいるんだな……と引っかかる部分はあるけど、別に星羅と飲めているなら仕事だろうが星羅の気まぐれだろうが、どっちでもいいと思えた。
「それで、順調なの? 西原君仕事は」
「いいや……全然だよ。この間も、きちんと準備して挑んだ競合プレゼン落としちゃってさ……全く数字残せなくて」
「それで元気がなかったんだね……」
「うん……同期のみんなはすごいよな。清瀬も松山も、順調に成長していってるし」
「あの二人は最初から違ったじゃん。西原君だって今はまだ芽が出てないだけで、これからでしょ」
続々とテーブルの上に運ばれる串揚げや一品料理を横目に、星羅の言葉を一言一句聞き逃さないように集中して聞いていた。
俺には俺の、良さがある……それは果たして、本当なのか。
打ちひしがれていた心の奥に、重く響く言葉をかけてくれる。
「まあ今日は仕事のことなんか忘れて、たくさん食べよ! ほら、冷めないうちに!」
星羅は目の前のご馳走に、率先してかぶりついた。
俺も合わせるように、熱々の串揚げを口にする。
テーブルの上に常備されているソースを上からかけ、玉ねぎやレンコンの串揚げから口にした。
どれもサクサクで、中の食材はシャキシャキしている。ビールによく合う。
星羅の言う通り、今は仕事のこと……一旦忘れようか。
「あれ、西原君って、彼女いたっけ?」
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