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★side:バーノン
「中々、面白いやつだ」
バーノンは、ロベリアを見送りながら、つぶやいた。
王子と知りながら、かしこまることもなければ、媚びへつらうこともしない。むしろ、こちらが言ったことに、揚げ足さえとってくる。バーノンにとって、こんな人物は、身内以外に初めてだった。
小さい頃から、バーノンの周りにはたくさんの大人がいた。王宮には色々な人間がいて、その色々な人間を見て育った。
純粋なやつ、腹黒いやつ。口は悪いけど、根はいいやつ。敵対心を抱くやつ。
だから、人を見る目はあると自負している。
そして。
あれだけ多くの人間がいる王宮においても、面白いやつはめったにいない。
「ロベリア・デ・カタルシスか」
続けて、つぶやいたその顔には、思わず、笑みが浮かんでいた。
先ほど本人にも言った通り、ロベリアのことは前々からチェックしていた。そう、彼女がここへ入学してきた時から。
何しろ、聖属性を持つ乙女は、王室にとっても重要な存在であった。
もっとも、彼女の顔を見たのは今日が初めてだったが。
「あの悪名高かったカタルシス伯爵も、ロベリア嬢が生まれてからは、心を入れ替えたと聞きますからね。今では、まるで別人のようだと」
側衛のディランが横から言う。
「それも、ロベリアの持つ聖属性の力の作用か」
「品行方正で、成績も優秀。殿下のお后様に、不足はないかと」
かねてからディランは、それを望んできた。というのも、古来より、王室は聖属性の乙女を迎え入れてきた。乙女に選ばれた者が、王位を手にすることができる。そんな伝承もあるからだ。
そして、異母弟が王位を得るため、こそこそと動き始めた今、乙女の存在は切り札になる。ディランは、そう考えているらしい。
しかし。
「それは、俺の決めることではない。彼女に選ばれてこそ、だろう」
ロベリアの姿が消えた方を見つめながら、バーノンは笑う。
古い伝承など、クソくらえ。
今の今までバーノンは、そう思っていた。だから、大して興味もなかったのだが。
「縁があれば、また会うこともあるだろう」
心のどこかでは、それを楽しみにしている自分がいた。
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