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幼気な花
小さな頃から人の目にさらされて生きてきた。私の姿は、良くも悪くもいつだって注目の的だった。
「恋! 遅れてごめん!」
「ううん、私もさっき着いたところなの」
遊びの待ち合わせをしていた親友が、ほんの五分遅刻したことを大げさに謝ってくれる。時間ぴったりくらいに到着していた私を、彼女は五分であろうとここに一人きりにしたくなかったことがうかがえて、ありがたい気持ちと少し申し訳ない気持ちも生まれた。
実際、彼女が到着するまでの五分間この場所に立っていて、何度か嫌な気持ちになったのだ。
遠巻きに私を見て指さしてはひそひそと話し合う男の子二人組。隣で同じく待ち合わせだろう立ち尽くす女の子の遠慮のないちらちらと送られる視線。通りすがりざまにじろじろとぶしつけに眺めてくる男の人。
いつもこうなのだからもう慣れたと言ってはそうなのだが、それでも、慣れたら嫌な気持ちをシャットダウンできるかと言われたらそういうわけではない。いつだって、嫌なものは嫌だ。
そして、待ち合わせ相手が女の子だと分かった途端、私を遠巻きに見ていた男の子二人組が、にやにやと笑いながら近づいてきたのが見えたので、慌てて親友の腕を掴んでその場を離れようとした。彼女も私のそういう態度には慣れっこで、次に何が起きるかは知っているので、何も言わずに足並みを揃えてくれる。
間一髪のところで、青信号が点滅している横断歩道を渡って向こう側の人混みに紛れることができて、今回は事なきを得る。軽く振り向き視線だけで背後を確認しほっと息をついて、そもそもの目的だったショッピングビルに向かう。
大学生になって進路が分かれてから初めて顔を合わせ、春服を見に行こうよ、ということで今日の待ち合わせなので、若い女の子向けのアパレルブランドがひしめくビル内を散策しながら、親友――冴香がため息をついた。
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