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「ほんとに大丈夫だった?」
「うん。かろうじて声はかけられてないから」
「なら、良くはないけど、いいか……」
今だって、すれ違う女の子たちからわずかに視線を感じるし、店先で気になる服を見つけて足を止めるとじろじろと店員と客の区別なく見られる。辟易しながらも、友達と来ているから、と店員の接客を断りつつも落ち着いて服ひとつ見ることができないのかと憂う。
私が二着、冴香が三着服を買い、いったん満足してお茶をするために適当なカフェに入って腰を落ち着ける。春休み以来なので、近況を皮切りに話が弾む。
「大学どう?」
「ぼちぼちかな~。サークルの先輩が授業のじょうずな取り方とか教えてくれてさ、けっこう助かってる」
「わーいいな。アクティビティのサークルなんだっけ?」
「そう、いろいろ遠足みたいにイベント行ったりアウトドアの遊びに行ったりするとこ。けっこう楽しい。こないだ新歓あってさ……、恋はどう?」
「……ああ、私の話はつまんないからさ……」
「話しづらいこと?」
困って、目が泳いでうつむく。
入学式から今日のゴールデンウィークに至るまでで起こった出来事を、ぽつりぽつりと口に出す。
「入学式のあとに、サークルとか部活の勧誘で、なんか、変な先輩に目をつけられたっぽくてつきまとわれてて……、勝手に私が知らないうちに、私の彼氏になるのは俺だみたいな人が集まって、誰が私を落とせるかみたいな賭け? みたいなのしてて、毎日毎日知らない男の人に声かけられて、けっこう、厳しい……」
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