幼気な花

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 この顔で生まれてきたことは決して私が望んでそうしたわけではないし、そもそも望んでこの顔だったとしてもそれは決して周囲の男性に媚びるためではないし、ただ自分のために着飾っているのにそれを自衛が足りないと糾弾されて、どう考えても私に手を伸ばす男性が悪いのに私が誘っただとかそういうことを言われて。  中学進学、高校進学のときにも、今と似たようなことがあった。  新入生にとびきりかわいい女の子がいる! と話題になって、あっという間に学年問わず注目の的にされて彼氏になりたかったりちょっかいを出したい男子たちに囲まれて、嫌な気持ちにさせられているうちに女子たちには遠巻きにされる、ということが。  さすがに大学生になってまでそんなことは起こらないだろう、と半分期待、半分高をくくっていたのだが、人間というのは成人した程度ではまだ馬鹿のままのようだった。 「はあ……こんなことなら私も恋と同じところ受けておけばよかった」 「冴香だって勉強したいことがあって大学行ってるんだから、冗談でも馬鹿なこと言わないでよ」 「分かってるけど……」 「大丈夫、なんとかなるよ。まだ五月だし、ゴールデンウィーク明けたら案外みんな私のこと忘れてるかも」 「……そんなわけないじゃん……」  無理やり明るい声を出して、この話終わり! と言って次の話題に移る。バイトはどうする、授業が大変、五月病になりそう、みたいなどうでもいいことをたっぷり話して席を立つ。  会計のときに、レジでお金を出すと、店員さんがおつりをカルトンではなく私の手にレシートと一緒に握らせて、笑った。 「……え」
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