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「ご利用ありがとうございました!」
知らない男性に手を握られて体がぞわぞわとそそけ立ち、別会計だったのですでに会計を終えて外で待っていた冴香のもとへ、小銭をしまうのもそこそこに走る。たぶん本人は和やかな笑みを浮かべていたつもりだったのだろうけど、人を品定めするような気味の悪い笑みだった。
レシートと小銭を手にしたままの私を見て、冴香は眉を寄せた。
「どうしたの?」
「あ、えと」
今レジで起きたことを話すと、彼女はぎゃっと毛を逆立てる勢いで眉を吊り上げた。
「キッショ!」
震える手で小銭をしまい、財布のお札入れにレシートをしまおうとしてそれに気づく。裏面に書かれた携帯番号と、SNSのIDらしきアルファベット。
レシートを持ったまま硬直している私に、冴香が何かを察して私の手から紙を抜き取り目を剥いた。
「サイアク! 気持ち悪い! マジであり得ない!」
そのまま、冴香は私から奪ったレシートを持ったまま店内に戻っていく。あ、と思って慌てて追いかけると、レジの店員が入れ替わっていて、先ほどの若い男性ではなくもう少し年を重ねた女性になっていた。
「あの」
冷たい表情のままの冴香がその店員にレシートを突き出す。
「さっき会計した者ですが、レシートに個人情報を書いてこの子に渡した店員さんがいて」
「え……」
一気に表情を青ざめさせた女性店員が、冴香の手からレシートをひったくるように受け取り、裏面を確認する。わなわなと震えながら冴香が示した「この子」である私の顔を確認し、店の奥に引っ込んだ。言い争うような声がしてしばらくして、彼女が戻ってきて私に向かって深々と頭を下げる。
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