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天使は清らかで神聖な存在である。
なんて誰が言ったんだか。
私、ベル。堕天使。
そして元天使。
いろいろ悪巧みやイタズラをして神とか上の方の天使から叱られて堕天使に降格させられた。
「はぁ~腹へったぁ」
堕天使に降格すると今までいた天使の生活もできなくなる。
天使の住む集合住宅からボロ屋の一軒家へ住み、白色の衣装は薄汚れたグレーへ変わり、純白のツヤッツヤの羽根は真っ黒のツヤッツヤの羽根に……グレードアップした。
「さーて、ひと暴れしてやるか」
今日も与えられた命をまっとうするために天使たちから食べ物をくすね楽園の大樹(上位天使たちの憩いの場)に座りそれらを貪る。
「あ~林檎うまぁ」
「こらーーッ! 堕天した奴がなに呑気に林檎食ってんだ」
うるさく注意する声が下から聞こえた。
樹の根元で吠えてるのは私の幼なじみの天使・ミカだ。
「神聖な大樹の枝を折ったらどうなると思う! 樹から降りろ! 先輩たちに捕まったらとんでもない極刑になるかもしれないのに、お前はいつも性懲りもなく……」
「へいへい降りますよっ、と」
説教を遮るようにぺたんと雲の地面に着地する。
「久しぶりじゃんミカ。あんたが二級天使に昇格してから初めてじゃない会うの。私みたいな劣等生とは縁を切ったのかと思ったわ」
「気がかりなんだよお前は」
ボソッと呟きお小言の続きを再開する。
「ベル、お前は今堕天使なんだ。行動は慎め。完全に堕ちてないから神のお情けで天界にいることを許されてる身だ。なのにお前は反省もなく……天使時代から素行の悪さは知っていたが、今度こそ制裁されるぞ」
「へえ。お情けってのは衣食住もままならない状況の少女を荒野みたいな地に放り出すことをいうのか。勉強になるねぇ。さすが二級天使様~」
「俺に八つ当たりするな。自業自得だろ」
「はいはいすみません」
「はいは一回」
「へい」
「貴様……っ」
額に青筋浮かべ言うこの男もそうとう変わり者だ。
堕天使になった私に話しかける者は天界でミカ一人だけだ。
天使たちは堕天した者に対して冷たいから。
もう一度天使に戻れれば待遇も変わるが、だいたいは堕天使の頃に受けた冷遇でやさぐれて荒れたまま更正さず荒野にある堕天使たちの街で呑んだくれている。
ミカは私と幼なじみだが私と違ってミカは成績優秀で真面目な天使だった。
この男は仕事にそつなく誰とでも円滑に関係を築ける彼は昇級も早く、現在は二級天使(上位天使の下働き)まで昇格している。
上位天使のやつらを先輩なんて馴れ馴れしく呼ぶまでに。
「それでミカ。忙しいあんたがわざわざ私に何の用だ。“それ”と関係あることなんでしょ」
“それ”と指した先にはミカの両腕が抱えてるものがある。
ミカは明らかに私物でないスーツケースのようなカバンを持っていた。
カバンには天使のマーク。
「世界天使協会(お偉方)のもの……か?」
「上からの命令でな。お前には一ヶ月の間人間の住む下界で試験を受けてもらう」
「は? 試験?」
どういうこと?
「つまり」
ミカは咳払いすると、幼なじみとしての友好的な態度と変わり厳格な天使の顔をして言う。
「堕天使ベル。お前が天使に戻れるか否かを試験する。元天使の名にかけて人間たちに良い行いを施せ。合格すれば天使として戻れる。更正するチャンスを神は与えた」
「そんなっ……」
なんて面倒くさい!
「別に求めてないしチャンスなんて。面倒くさいし。試験とか……面倒くさいのに」
「つべこべ言わずにこれつけろ!」
「うぎゃぁぁぁーなにするんだー!?」
腕に何かつけられた。
なに……腕時計?
「良心測定器だ。これで行動の善良度をはかってポイントに加算する。善性の高い行いほどポイントは高く逆に悪いと減点される。ジャッジは天使協会がする。ちなみに合格点は500点」
「500点!?」
基準高くない!?
「ベルよ、健闘を祈る。大丈夫お前ならできる。下界へのゲートはもう開いてるから行ってこい」
そう言って蹴られた。
行ってこいって言って蹴るやつがいるか。
「覚えてろよサラリー天使ー~ッ!!」
私はゲートの中へ落とされてそのまま人間界へ転送された。
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