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一月一日。元日。
布団の中で睦月椿は寝返りを打つ。昨晩は家族と一緒に紅白歌合戦を最後まで観ていたため、まだまだ眠い。
「う〜……。今何時?」
枕元に置かれたスマホに手を伸ばす。時刻を見ると午前十一時を過ぎたところだ。普段ならば、こんな時間まで寝ていれば母親が怒りながら起こしにやって来るだろう。起こしに来なかったのは、正月だからかもしれない。
(もうちょっと寝ようかな……)
正月にすることなどほとんどない。普段は忙しいのだから、こんな時くらいはゆっくりしたい。布団の中に潜り込んでもう一度目を閉じた時、スマホが鳴り出した。
「誰?」
電話をかけてきたのは、大学生の頃から付き合っている風花恋雪だった。彼には年が明けた瞬間にLINEで「明けましておめでとう」と送ったが、返事どころか既読も付かなかった。大方寝てしまっていたのだろう。
「もしもし。明けましておめでとう」
『明けましておめでとう』
電話に出て互いに挨拶をする。すると恋雪が訊ねた。
『椿、今何してるの?』
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