2人が本棚に入れています
本棚に追加
赤く立派な鳥居の中に入る前に二人揃ってお辞儀をする。ここからは神の住む領域。普段宗教を信仰することがほとんどない日本人でも、神社に来ると顔付きが変わる。
神社の参道は神様の通り道。だから決して歩いてはいけない。両親に幼い頃言われたことを思い出しながら椿は歩く。隣の恋雪は、何を考えているのか険しい表情だ。
「恋雪、お腹でも痛いの?どっかで休む?」
「いや、平気だよ!」
「でも顔色悪くない?変なものでも食べた?」
「変なものって失礼だな〜」
神社が見えてきた。手前にある手水舎で手を清める。冬の水は冷たいが、神様に会うのに汚れたままの手では失礼だ。
「冷た〜……」
ブルリと椿の体が震えた。左手を洗い、次に右手を洗う。左手で水を受けて口をすすぎ、再び左手を洗う。最後に残った水で柄杓の柄を洗う。手水をする際に大切なポイントは、柄杓に水を汲むのは一度だけにしなくてはならないという点だ。
「一回しか汲んじゃダメって難しいよね」
「確かに。割とみんな何回も汲んじゃってる気がする」
最初のコメントを投稿しよう!