カラリちゃん

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 だから竜太くんが変になったのは、カブトムシ事件からだ。しばらくガッカリしていたけど、ある日僕を呼んでさ。  教室の隅で「今、カラリちゃんを育てているんだ」って小声で話してきた。カラリ? 虫? ってきいたら、僕たちと同じ7歳の男の子なんだって。びっくりしちゃって「まずいんじゃない、どこの子なの。勝手に家に住ませていいの」ってきいたよ。  それが不思議なことに、家にいつもいるわけじゃなくて突然いる。しかも親にはカラリちゃんは見えないんだって。    気兼ねなく一緒に家のなかで、鬼ごっこやかくれんぼができる。ラジコンで遊んだりプラモデルロボットでも遊んだり。僕は兄弟がいないからうらやましかったなあ。楽しそうじゃん。  ご飯だって分けることない。カラリちゃんが食べ物から透明な養分だけぬきだして食べるから。でも竜太くんはその後、食べるんだけど味気がない。ぜんぜん美味しくないんだって。そのせいか竜太くん、痩せてきたように思えたな。「カラリちゃんを育てる為だから仕方ないよ」。そう言って学校の給食をよくおかわりしていた。    1ヶ月後くらいかな、竜太くんが僕につぶやいてきたのは。 「この所カラリちゃんの成長が早すぎるんだ……」って悲しい顔をしていた。もう、向かいの長谷川さんちの中学生のお兄ちゃんくらいになっているって。これ以上育ってほしくない、ってクマになった目に涙をためてた。  カラリちゃんが家に来たばかりの時は楽しく遊んでいたのに。今はもうオモチャをさわりもしない。物を隠したり、扉を開け閉めしたり、お皿を割ったり。イタズラばかりする。  ひどい時は、階段を上がるママの足をひっぱって転ばせるらしい。カラリちゃんへの文句をたくさん言っていた。
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