〜 ⑥ 〜

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 俺の目の前には素晴らしい光景が浮かんでいた。はっきり見えなくても分かる。人生で唯一愛した女との間に生まれた我が子が立ち上がり、こちらに銃口を向けている。  まっすぐに、ただ俺だけに照準を合わせている。  なんかこれ、すごいな。  16年間を埋める、歪んだ俺だけの特権って感じがする。  俺もいよいよその時がきたってことか。  そう思ったとき、彼女の背面に浮かび上がる朝日がじりじりとこの世を照らしだした。  その昇りくる太陽の光は、彼女の頭上を覆う、まさに天使のリングだった。 「ああ、マリー。やっと会えたね、愛しのマリー、俺の天使」  俺は、16年前に別れたマリーを幻影として娘に重ね見た。美しいリングを冠した、やはり美しい娘はやや驚いた様子で俺に言った。 「ママのことを思い出したっていうの? この期に及んでなんて図々しい命乞いの仕方。私達を捨てた憎いやつ。ママがどんなに苦しい思いで暮らしてきたかなんて、あんたには分からないわ!」  銃口は真っ直ぐ俺にむけたまま、でもグリップは緩んだ様子で声を震わせていた。 「マリーは君にどんな素敵な名前をつけたんだい?」  冥土の土産と呼ぶには俺には豪華すぎるものだな。 「どうせすぐに死ぬんだから教えてやってもいいわ。──ミユキ、和名よ」  なんということだ。マリーは一度だけ言った話を覚えていたんだね。 「ミユキ、それは俺の母の名だ。そうか、ミユキか。生きててくれてありがとう」  神に感謝などしたことないが、これが神の(おぼ)()しというなら感謝せねばな。  ミユキに会わせてくれたこと、礼を言う。 「ママは……」  ミユキが話し出す。
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