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真っ暗な部屋に、起動画面が表示されたモニターの明かりが灯る。再生を示す三角マークを押すと、モーター音が鳴り、薄ぼんやりとしたモニターに鮮やかな色を映し出す。
大型化しているテレビと比べれば、かなり小さいモニターではあるが、布団の中だろうとトイレだろうとどこでも大好きな映画を視聴できるDVDプレーヤーはありがたい。最近は配信などで、スマホやパソコンでも気軽に映画が楽しめるようになっている。しかし、俺は配信は使わない。大好きな映画たちのDVDケースを並べて、それらを愛でることも映画の楽しみの一つだと思っているからだ。きっと、読書が好きな人が今でも紙の本を集めているのと同じかなと思う。俺にとっての人生のマストアイテムだ。
映画が始まり、俺はその世界に没入していく。映画を楽しむのももちろんだが、俺ならこうする、という目線で映画を観ていく。将来、映画監督を目指している俺にとって、すべての映画は勉強材料でもある。そして、その勉強方法は、否定していくことだと思っている。ただ否定するだけじゃなく、俺ならこう撮るというちゃんとした考えを持った上での否定、つまり改善案の提示だ。映画や絵画などの芸術作品は一度発表したら、そのあとどれだけ修正したくてもできない。だから、芸術作品は作るという表現を使う。いくら改善案を出しても、もう遅いのだ。映画は一度作って発表してしまったら、育てることができないのだ。
「ああ、違うだろ」
言葉と同時に一時停止ボタンを押す。親友だと思っていた男性に、主人公が胸を包丁で刺されるシーンだ。
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