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「このカット割りじゃないんだよ。大切なのは刺した奴と刺された奴の表情なんだよ。あーあ、俺ならこんな雑な撮り方しないのに。もったいない」
自分の理想と思えるシーンを脳内再生しながら、もう一度再生ボタンを押す。映画自体は面白い。ただ、映画監督を目指している目線で見ると、もったいないとか、なんでだよ、なんて思いも同時に湧いてくる。
「いつまで起きてんのよ。明日も学校でしょ。早く寝なさい」
映画を一本見終わり、次のケースから別の映画のDVDをプレーヤーに入れようとしたところで、お母さんがいきなり部屋に入ってきた。
「今から寝るところだよ。いきなり入ってくるとか、やめてくれよ」
「早く寝ないからでしょ。いつまでも映画なんか観てないで、早く寝なさい。明日の朝起こさないわよ」
「わかってるって。おやすみ」
毎晩遅くまで映画を観ているせいで、俺は朝が苦手だ。毎朝、お母さんに起こされて、なんとか遅刻せずに学校に行けている状態だ。すぐに寝るといいながらも、俺はDVDプレーヤーの再生ボタンを押す。ヴィーンというモーター音が鳴り、モニターが再び明るくなる……はずだが、モーター音は鳴り続けモニターは薄ぼんやりとしたままだった。
「あれ、おかしいな」
いつまで経っても映画が再生されない。俺は一度ディスクトレイの蓋をあけ、DVDを入れ直した。再度、再生ボタンを押すと、ヴィーンといういつものモーター音が響く。しかし、それは先ほど同様いつまでも止まることはなく、逆にモニターは薄ぼんやりと控えめな光を放っているだけだった。
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