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「みんなはそうでも、俺はやっぱりDVDがよくって。でも、千二百円じゃ難しいですよね」
「こだわりか。僕は好きだよ、そういうの。そこの棚にDVDプレーヤーがあったと思うよ。なんか見慣れないメーカーだったけれど、動作確認は終わってるから」
示された棚を見ると、確かにDVDプレーヤーが一つ置かれている。メーカー名は確かに聞いたこともないけれど、動作確認は済んでいるのだったら、今夜も映画が観られるのならなんでもいい。
「これ、いくらですか?」
「ああ、無名メーカーだし、三百円でいいよ」
「えっ、三百円?」
「今どき、DVDプレーヤーなんて売れないからさ。無名メーカーだし、なんかよくわからない機能もあって修理が必要になってもできそうにないから。三百円で買うかい?」
まさかの三百円。このDVDプレーヤーを買っても、まだ九百円も手元に残る。DVDが一枚買える。よくわからない機能は使わなければいいし、三百円なら数回使って故障したとしても諦めがつく。俺はすぐにこの名も知らぬメーカーのDVDプレーヤーを購入する意思を告げ、代金を支払った。
一分でも早く帰りたくて、帰りも激漕ぎだった。新しく購入したDVDプレーヤーで、余ったお小遣いで買った"皆呪"というB級ホラー映画を観たい思いが強かったためか、行きほど疲労は感じなかった。
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