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夕飯も風呂も速攻で終わらせて、自室でDVDプレーヤーを箱から出す。外見は光沢のない銀色で、映画撮影で使うカチンコのようなデザインが施されている。箱の中には中古品には珍しく説明書のようなものが入っていた。そこには、当たり前のようにDVDの入れ方、再生、一時停止、音量などの操作説明が書かれていたが、最後の一文に見慣れない言葉が並んでいた。
この機種にはレイズ機能が搭載されています。
「なんだ、レイズ機能って?」
聞いたこともない機能名だが、その詳細や操作方法などは全く記されていなかった。そこで、あの店員が言っていた、よくわからない機能がこのレイズ機能のことかと合点がいった。
「まあいいや。普通に映画を観られればそれで十分」
俺はあまり深く気にすることもなく、今日買った"皆呪"というDVDをプレーヤーにセットして、再生ボタンを押した。以前の機種と同じように、ヴィーンという機械音に続いて、モニターには映画が映し出され始めた。
「おお、ちゃんと再生された」
三百円という安価だったこともあり、もしかしたら、と一抹の不安があったが、映画が無事に再生されたことでその不安も払拭された。そしてそのまま、映画の世界観に没入していった。
「いまどき、そんなことないって。リアリティ低すぎるだろ、この映画」
一時停止をして映画を止めた状態で、いつものようにダメ出しと改善案を口にする。個人情報保護のため、病院では家族以外簡単に面会できない昨今、この映画では友達というだけで簡単に精神科病棟に面会できているシーンがどうにも気になってしまった。
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