そこにまだいる

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「天子様、天子様、どうかいらしてください。 きてくださったら『はい』のほうへ十円玉を進めてください」 これを数回、声に出してみた。 すると。 明らかに自身の力ではなく、何かが引っ張るように十円玉が動いた。 「ひゃあぁっ!」 初めてだったので、驚きすぎて十円玉から人差し指を離しかけた。 心臓の鼓動がうるさい。 十円玉を置く指が固くひきつった。 「あ、あっ、あなたは、天子様ですか?」 十円玉が『はい』へと動いた。 「私の話しを聞いてくださいますか?」 十円玉が『はい』へと動いた。 どうしよう、まず何から聞こうか? 「天子様、私は美術で将来、成功できますか?」 十円玉が『いいえ』へと動いた。 「うそ、え?私は内野明子に勝てないまま、そういうことですか?」 十円玉が『はい』へと動いた。 「いやよ、いやです、そんなの!どうにかしてください!」 十円玉が文字を辿り始めた。 『と・゛・う・し・た・ら・い・い・の』 『どうしたらいいの』と、聞かれた。
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