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その日、学校に行くと、和真がわたしに話しかけてきた。
「これ」
和真がわたしに手渡したのは、文化祭でのコンサートのチケットだった。
「いいの?」
わたしは、今まで和真に対してとっていた素気ない態度を思い出し、そのチケットを本当に自分が受け取っていいのかどうか、和真に聞き返した。
「うん。もちろん」
和真は照れくさそうに微笑んだ。
先日までは取り憑かれたように、麗華、麗華と騒ぎ立てていたのに、今日の和真は落ち着きを取り戻していた。
「ありがとう」
わたしは素直に礼を言うと、チケットを受け取った。
しかし、和真は麗華に気のようなものを吸い取られていたけど、身体の方は大丈夫なのだろうか。
わたしは和真の頭の先から足元まで、まじまじと観察した。だけど、和真には特に変わったところはなさそうだった。
リハーサルの時、麗華は一体何をしていたのだろうか。それに、あの二本の黒い翼は一体、何だったのだろうか。
リハーサルが終わると共に黒い翼は見えなくなってしまった。だけど、あれは見間違いなんかでは絶対になかった。
直接麗華に聞くのは怖くて出来ないけれども、当の本人は、今日は学校を休んでいた。
わたしは、とりあえずはホッと安心しながらも、得体の知れない麗華に気を許してはいけないと、改めて気を引き締めるのだった。
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