14

1/1
前へ
/15ページ
次へ

14

 その日、学校に行くと、和真がわたしに話しかけてきた。 「これ」  和真がわたしに手渡したのは、文化祭でのコンサートのチケットだった。 「いいの?」  わたしは、今まで和真に対してとっていた素気ない態度を思い出し、そのチケットを本当に自分が受け取っていいのかどうか、和真に聞き返した。 「うん。もちろん」  和真は照れくさそうに微笑んだ。  先日までは取り憑かれたように、麗華、麗華と騒ぎ立てていたのに、今日の和真は落ち着きを取り戻していた。 「ありがとう」  わたしは素直に礼を言うと、チケットを受け取った。  しかし、和真は麗華に気のようなものを吸い取られていたけど、身体の方は大丈夫なのだろうか。  わたしは和真の頭の先から足元まで、まじまじと観察した。だけど、和真には特に変わったところはなさそうだった。  リハーサルの時、麗華は一体何をしていたのだろうか。それに、あの二本の黒い翼は一体、何だったのだろうか。  リハーサルが終わると共に黒い翼は見えなくなってしまった。だけど、あれは見間違いなんかでは絶対になかった。  直接麗華に聞くのは怖くて出来ないけれども、当の本人は、今日は学校を休んでいた。    わたしは、とりあえずはホッと安心しながらも、得体の知れない麗華に気を許してはいけないと、改めて気を引き締めるのだった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加