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電車で隣町までやって来た純恋はいつも行くデパートへと歩いて行く。
(お小遣いピンチだからなぁ……折角来たけど、今日は見るだけにしよ……)
特にあてもなくぶらぶらと店内を見て回る純恋がふと、エスカレーター付近に視線を移すと、
「……彗?」
少し距離があるけれど、エスカレーターで純恋の居る階に昇ってきた彗が、自分の方へ向かって歩いてくる姿を捉えた。
(……出かけるって言ってたもんね。誰かとショッピングだったんだ)
人混みに紛れている為、彗の隣にいる人物が誰だか分からないまま、すぐ近くまでやって来る。
「……!?」
そして、彗の隣に居る人物を見て、純恋は驚きを隠せず、思わず凝視する。
驚く純恋の視線に気付いた彗と目が合い、二人は一瞬見つめ合う形になったけれど、彗はすぐに視線を逸らし、何事も無かったかのように相手と話しをしながら純恋の横を通り過ぎた。
「…………」
そんな彗とは対照的に純恋は暫くその場から動けないでいた。
それは、彗の隣を歩いていたのが、とても綺麗な女の人だったから。
クラスメイトでも知り合いでもない、明らかに純恋たちよりも年上の女性。
(……嘘つき……。彼女、作る気ないって言ってたのに……)
女性と一緒に居たという事実もショックだった純恋だけど、一番悲しくなったのは女性に向けられた彗のあの優しい表情で、それを思い出すと純恋の胸は締め付けられるように痛み出す。
(……あんな彗、見たことないや……)
なんだかんだでいつも側に居てくれた彗が遠くに感じてしまった純恋の心は、複雑になる一方だった。
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