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学校を出てから暫く、彗が家とは違う方角へ自転車を走らせていることに気付いた純恋が彗に問い掛ける。
「彗、どこ向かってるの?」
「ん? ああ、ちょっと買いたいモンあんだよ。だから付き合え」
それだけ言って彗は再び無言で自転車を漕いでいく。
「ふーん?」
それを聞いた純恋は乗せて貰ってる以上文句も言えないので、彗の背中に掴まって目的地に辿り着くのを待っていた。
着いた先は街中にあるオシャレな雑貨屋さん。
「彗の欲しい物って、ここに売ってるの?」
「阿呆か。俺が用あるのは隣!」
言って彗が指差したのは雑貨屋の隣にあるこじんまりとしたCDショップだった。
「俺ちょっと目当てのモン探してくっから、お前は隣の雑貨屋でも見てろ」
どうやら純恋が退屈にならないよう雑貨屋とCDショップが隣合っている店を選んだらしく、それだけ言って彗は店に入って行った。
「……もう。勝手なんだから……」
特にCDショップに用の無い純恋は彗に言われた通り、雑貨屋で待つことにした。
店内に入ると所狭しと可愛い雑貨が並んでいて、
「可愛い…」
可愛いものに目がない純恋は早速手に取りながら商品を品定めし始めた。
思えばこの辺りは通ったことはあって店があるのも知ってはいたものの、特に気に留めていなかったということに気付いた純恋。
(結構種類豊富で、値段もリーズナブルなんだぁ。もっと早くから入ってれば良かったなぁ)
なんて後悔しつつ、端から端まで入念に商品をチェックする純恋。
すると、
「あ!」
花のリースの中央にうさぎが描かれたネックレスを手に取った純恋は思わず声を上げる。
(可愛い!……けど、今月お小遣いピンチなんだよねぇ……)
もの凄く好みのデザインではあるものの、値札を見ると【1980円】と記されており、今月のお小遣いにあまり余裕が無かった事を思い出した純恋がネックレスを元の場所に戻そうとすると、
「これ、欲しいのか?」
純恋からネックレスを奪って聞いてくる彗。
「彗! うん。だけど、今月お小遣いピンチだから、またの機会にしようと思って」
突然現れた彗に驚きながらも買うのを諦めた経緯を純恋が説明すると、
「買ってやるよ。待たせたし、買い物付き合わせたから、その礼な」
彗が買ってくれると言い出した。
「え? いいよ! 別に……」
「遠慮すんなって」
流石に申し訳ないと断る純恋の言葉を聞かず、半ば強引に彗はネックレスを手にレジへと向かってしまった。
「ほら」
数分後、彗は買ってきたネックレスを純恋に手渡した。
「……ありがと……」
普段こんなに優しいことを彗からして貰うことがない純恋は少し戸惑っていた。
「帰るぞ」
そして、彗もまた普段し慣れないことをして若干照れているのか、彼の顔は少し赤くなっていて、互いに戸惑いながら、二人は帰路に着いたのだった。
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