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episode2
「いただきます」
翌朝、純恋と彗は一言も会話を交すことなく朝食を摂っていた。
累はというと、今日は土曜日で学校は休みということもあり、朝早くから出かけてしまっていた。
純恋の父は休日出勤、母は友人と芝居を見に行くとそれぞれ出掛けていて、二人の間には気まずい空気が漂っていた。
(……気まずい。昨日のは、私の態度が良くなかったよね。謝らなきゃ)
どうにかこの空気を変えなくてはと純恋が昨夜のことを謝る為に口を開きかけると、
「……あのさ、彗――」
「ご馳走さま。俺、これから出かけるから。帰り遅くなると思うし、おばさんに今日は夕飯いらないって言っといて」
純恋が話しかけるよりも早く席を立ち、食器を流しに置いた彗は、それだけ言うと純恋を見ることなく出て行ってしまった。
(……な、何よ? シカト? 人がせっかく謝ろうとしたのに……)
「……彗の、馬鹿……」
一人取り残されてしまった純恋はポツリと呟くと、自分と彗の食器を洗い始めた。
それから自室へ戻り、特にすることもない純恋はベッドの上でゴロゴロしながら「……暇だなぁ……」と呟いた。
高校に入るまでの休日は常に三人一緒で、家でゲームしたり、互いの共通の友人たちも交えて街へ遊びに行ったりしていた。
けれど最近は三人で集まる時間すら無くなってきていることに気付き、純恋は溜め息を吐く。
「……はぁ……気分転換に、買い物でも行こうかな…」
これ以上一人でこんなところにいてもネガティブなことしか考えなさそうで、このまま考え続けたら病みそうだと感じた純恋は気分転換に買い物へ出かけることに決めて、早速準備にとりかかった。
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