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pipipipi――……
とある部屋にスマホのアラーム音が鳴り響く。
「うーん……」
その音で夢から覚めた少女、真野 純恋はカーテンの隙間から射し込んでくる陽の光の眩しさに目を細め、眠たい身体を起こしながら側にあったスマホを手に取ると、アラームを消してベッドから降りて欠伸をしながらゆっくりと着替えを始めた。
「ねむ……」
着ていたTシャツをベッドの上に脱ぎ捨て、上半身はブラジャーを着けただけという無防備な格好のまま、クローゼットの扉に掛けてある制服のブラウスを手に取った、その時――バンッと、突然部屋のドアが開く音と共に、
「純恋、お前のとこに俺の数学のノート混じってねぇ?」
そんなことを言いながら呑気に入って来たのは純恋が着る制服と同じ制服を着た一人の少年だった。
彼の名前は丹羽 彗。身長は約180センチ程で、目鼻立ちが整っていて、焦げ茶色の髪をワックスで無造作に散らし、制服も着崩している。
一見異性にモテそうなタイプに見えるものの、少しツリ目がちなところが原因なのか、彼は女子からは若干距離を置かれる存在だった。
とまあ、そんなことはさて置き、
「…………」
あまりに突然の事態に、純恋は今の自分の格好を忘れて無言で立ち尽くしている。
そんな純恋の姿を見た彗は、
「って! お前っ、何て格好で突っ立ってんだよ!?」
少し頬を赤くさせながら慌てた様子でそう言い放った。
「あ、アンタがいきなり入って来るからでしょ!? 彗の馬鹿!!」
彗に言われ、我に返った純恋は急に恥ずかしくなり、手にしていたブラウスで前を隠しながら彼を部屋の外に追いやる。
「最低!」
再び静寂が訪れたものの、怒りが治まらない純恋は急いでブラウスを着て身なりを整えた。
純恋と彗は同い年の幼馴染みで、向かいの家に住んでいる。
彗はマイペースで空気を読まない性格な上にデリカシーも無いことから、純恋は彗のことをよく思っていない。
けれど彗は、そんな純恋の思いを知ってか知らずか何かとちょっかい出したり、困った時は調子良く頼ってきたりと常に彼女を振り回していた。
「全くもう!」
結局、怒りが治まらなかった純恋は準備を終えると、頬を膨らませたまま部屋を出て階段を降り、リビングへ向かって行く。
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