二 白遊が見つけたもの

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二 白遊が見つけたもの

 妖しの森は昼でも薄暗い。  日の光が届かないくらい木々が枝を伸ばし続けており、妖しが好んで棲み着いている。  里山と妖しの森には境界があり、お互いに干渉しないことが暗黙のルールとなっているが、たまにどちらかが一線を越える時がある。  そんな時には里山と妖しの森の境界線に居を構えている、人とも妖しとも話せる「妖屋(あやしや)」の出番だった。  兵右衛門の(めい)を受けた白遊はすぐに妖しの森に出かける。昼でも暗いが、明かりのない夜は真っ暗闇。  唐傘小僧がぴょーん、ぴょーんと白遊についてきて、白遊の行く手を照らしてくれる。  白遊は赤ん坊の頃から、妖しが見えた。  白遊自身、周りにはいつも妖しが居ると思っている。だがそれは、普通の人には見えない。   白遊の両親は、妖しを呼び寄せているような娘の不思議な力を怖がり、妖しの森に捨てた。  母のお腹には次の子どもが居たし、白遊が居なくても跡取りにも困らなかった。  妖しの森に捨てられた日、白遊は泣かなかった。  物分かりが良かった訳ではないが、白遊には泣くと言う感情が分からなかった。  一人でトボトボ歩いていた幼い白遊を拾い、育ててくれたが妖屋の兵右衛門だった。  以来白遊は、兵右衛門と妖屋で一緒に暮らしている。  白遊は妖しを怖がることはない。自分の能力のせいもあるだろうけれど、白遊にとって妖しの森の妖したちは、ほとんどが友人たちだ。  与一が大岩に襲われた、と言う場所までやって来た白遊は辺りをキョロキョロと見回した。  同じ様にキョロキョロ見回している唐傘小僧に、白遊は指差した。 「あそこ。何か、ある」  高い高い杉の木の天辺。  ぼう、とした光が見えた。  唐傘小僧は白遊を自分の傘に乗せ、ぴょーんと飛び上がる。  くるくると傘を広げ、一飛びであっという間に天辺に到達した唐傘小僧と白遊は、目の前でぼぅ、と光っている玉を覗き込んだ。
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