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森の奥。
石造りの小さな塔。
わたしが魔導書を読んでいたら、外から勢いのいい足音が聞こえてきた。
「魔女様ー! 魔女様!」
「あら。そんなに慌ててどうしたの?」
息せき切って現れたのは、金髪碧眼の美少年だ。
彼は頬を赤くしながら、何かをわたしに差し出してきた。
「これをどうぞ」
「何かしら」
彼がわたしの掌に乗せたのは、七色に光る石だった。
「川辺で拾いました。とても美しくて、魔女様に似合うと思ったので」
「ありがとう。嬉しいわ」
わたしは石を宙に翳してみた。
きらきら。
薄暗い室内でも分かる煌めきだ。
わたしは、思わず顔をほころばせる。
「オリヴァーはきれいなものを見つけるのが得意ね」
「へへ。魔女様に褒められて光栄です」
オリヴァーは満足そうにしている。
彼は時々、森へ散歩に出かけては色んなものを拾ってくるのだ。
「そろそろ夕食の支度をしましょうか。今日はウサギをさばいてちょうだい」
「分かりました」
「わたしは根菜でスープを作り、パンを焼いておくわ。楽しみにしてるわね」
「行ってきます!
オリヴァーは元気よく飛び出して行った。
きっと生きのいい大きなウサギを仕留めて帰ってくることだろう。
「楽しみにしてるわ、オリヴァー」
今年で十二歳になるだろうか。
わたしは彼の未来を知っている。
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