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オリヴァーは十八歳のときに覚醒して魔王となり、この世界を滅ぼすのだ。
何故彼の未来を知っているか?
それはわたしが、『一度死んだ』からだ。
聖ペサメーノス王国。
わたしはこの国の第五王女だ。といっても、母は庶民であり、わたしの存在は公にされていない。
だからといって自由に生きさせてもくれない。
王族という存在に己の意志なんて存在しない。まして庶子なら、なおさらのこと。
一度目の人生。
わたしは実の母と北の貧民街で暮らしていたが、五歳のとき、母が死んだ。
そのとき自分の出自を知らされた。
救いの手が差し伸べられたと思ったのに、連れていかれた先では地下牢での生活を強いられた。
死なない程度に生かされていたが、終わりはあっけなく訪れた。
魔王オリヴァーが黒魔法でこの国を滅ぼしたのだ。最期の瞬間は、覚えていない。
――そして死んだわたしは、気づけば、五歳まで若返っていた。
わたしは決意した。
王家の迎えから逃げ出すことを。
オリヴァーを見つけ出すことを。
そしてわたしも魔王と共に、今度は王族が滅ぶ瞬間を見届けるのだと。
オリヴァーを探すこと、五年。
オリヴァーは南の貧民街で暮らす孤児だった。
わたしは素性を隠して『百歳を超える魔女』と名乗った。
そして彼とともに王都から抜け出して、森で暮らして、五年になる。
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