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早すぎるだろ!お前は爺ちゃんか!
朝が苦手な俺は目覚ましぐらいじゃ起きられない程で、誰にも起こされなければ平気で昼まで寝ている。
今日もその予定だった……
冷房を付けっぱなしで寝ると母ちゃんに怒られるからタイマーにして寝てるんだけど、どうも暑くて夜中に起きちまう。お陰で朝方はいつもより熟睡タイムに入る。
筈だった。なのに今日はこんな風に回想してしまうぐらい意識が薄っすらある。
今とかちょうどいい抱き枕もあるから気持ち良く寝ている筈なのに……あれ?俺の部屋に抱き枕なんかあったっけ?
「貴哉♡まだ早いから寝てて平気だぞ♡」
「……伊織?」
抱き枕だと思っていたのはなんと赤い髪の伊織だった!
そうだった!今日から新学期が始まるんだった!
慌てて飛び起きると、伊織に抱き寄せられておでこにキスをされた。
「慌てるな。時間はまだあるから♡」
「今何時何だ?」
「6時♡」
「早すぎるだろ!お前は爺ちゃんか!」
「だって早く貴哉に会いたかったんだもん♡」
朝から俺にベタベタしてくる桐原伊織は俺の一個上で二年だ。こいつはファンがいるぐらいみんなの人気者で、何をやらせてもこなしてしまう所と、何と言ってもこの男らしい整った顔!目が覚めてこんなイケメンがいたら誰も起きたくねぇだろうよ。
俺は起きるけどな!
「ちょうどいい。伊織、話がある」
「なになにー?」
俺が言うと、嬉しそうに起き上がってキラキラした笑顔を向けて来た。
あ、こいつ俺が告白すると思ってんな?
いやまぁ確かに昨日はそんな雰囲気だったけどよ……
ギリギリで俺の考えは変わって、もう伊織とも空とも付き合わないって結論を出したんだが……
「てかお前空になんて言ったんだ?寝ようとしてたら空がうちに来たぞ」
「行かせるようにメッセージ送ったもん」
「何だと!?」
「ほら」
当たり前のように言って空へのメッセージの送信画面を出してスマホを向けて来た。
「突然だけど、明日から貴哉の送り迎えは俺がするから。悔しかったら今日中に貴哉を取り戻してみな!早川に出来ればだけどな」
なんとまぁ挑発的な文章!だからあいつあんな風になってたのか!
「はぁ、お前らしいな……まぁお陰で踏ん切りついたからいいけどよ」
「と言いますと!?♡」
「昨日空と話して決めたんだ。俺どっちとも付き合わねぇから」
「……ん?どっちとも?」
「そ。お前ら二人とも面倒くせぇから」
「何で!俺と付き合うんじゃなかったのかよ!」
「気が変わったんだよ!あ、文句ある奴はぶん殴るからなー。空にも言ったらあいつは黙ったぞ」
「俺は殴られてもいいから黙らねぇよ!」
「黙らねぇと嫌いになるぞ」
「卑怯だなぁ……ふーん。まぁいっか。また付き合いたいって思ってもらえばいいんだろ?早川と別れただけでも良しとするかー」
伊織は少年みたいにニシシと笑って言った。
空と違って聞き分けが良くて助かるな。
居心地の良さでは二人は似てるけどな。
俺は着替えて伊織と下に行き顔や歯を洗ってリビングに行くと、母ちゃんがいた。母ちゃんはいつも朝早く出ていく父ちゃんの為に起きて朝飯を作ってるらしい。だけどその後パートの時間まで寝てるけど、今日は俺の分も用意してくれたみてぇだ。
テーブルには目玉焼きとベーコン。そして今トースターで焼いてるトーストを乗せる皿が二人分用意されていた。
「おはよう貴哉♪今日は早いじゃないか」
「これから俺が貴哉に規則正しい生活させますよ♪」
俺がいない間に二人は話でもしたのか、伊織は当たり前のように用意された朝飯の前に座っていた。
俺もその隣に座る。
「頼もしいね~。空はどうした?」
「別れた」
「もう別れたのか!で、今度は伊織って訳?」
「ちげぇよ。もう誰とも付き合わねぇの!母ちゃん、俺イチゴジャムがいい」
「イチゴは切らしてるんだよ。ブルーベリーで我慢しな」
「凛子さん、貴哉はこう言ってますけど、俺と貴哉って両想いなんです。近いうちに付き合いますので、その時はまた挨拶させて下さいね♪」
「男前な上にしっかりしてるんだね~!気に入った!貴哉、伊織にしな!」
「適当な事言ってんじゃねぇよ!伊織、さっさと食って行くぞ!」
「いただきまーす♪」
このままじゃ二人のペースに持っていかれる。朝から疲れたくねぇし、無理矢理朝飯を詰め込んで伊織と家を出た。
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