※ごめんね。許してくれないかな?

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※ごめんね。許してくれないかな?

 ※紘夢side  今日は学校へ行く気がしなかったから朝から家に引きこもっていた。  貴ちゃんにバレた。  次の手は考えてある。  だけどもうそんな気も起きなかった。  ずっと貴ちゃんの事を想って生きて来て、偶然再会出来て嬉しくて、俺の事に気付いてもらいたくて、あの手この手を使って気を引いて、それでも気付いてくれなかったあの貴ちゃんからの突然の電話。 『ブラックキングが出てたアニメって何て名前だっけ!?』  内心緊張しながら取った電話から聞こえて来たセリフに、さすがの俺の脳も一瞬フリーズしたよ。  俺が黒幕だと知って貴ちゃんは怒ってるとばかり思ってたからね。  とうとう気付いてくれたのかな。  そう思ったら俺はワクワクが止まらなかった。  だって、ブラックキングの話をするって事はそう言う事でしょ?  俺は「正義の味方ジャスティスマン」のDVDを持って家を出た。今の俺には送って行ってくれる人なんていないから自分の足で貴ちゃんから送られて来た住所まで向かう。  結構遠い距離だったけど、タクシーを使えばいろいろ考えている内に到着するだろう。  早く貴ちゃんに会いたいな♪  そしてあの頃のようにまた一緒に遊ぶんだ♪  俺は途中で行きつけだったケーキ屋に寄ってショーケース内のケーキを持ち切れるだけ一通り買った。  喜んでくれるかなぁ貴ちゃんは♪  笑顔でケーキを頬張りながらブラックキングを見てる貴ちゃんを想像して一人でニヤける。   「あ、運転手さん、ここら辺です」  送られて来た住所の近くまで来たのでタクシーを降りる。そして近くにあった「秋山」の表札の家に到着する。  ここが貴ちゃんの新しい家か……  貴ちゃんが引っ越してからここで育っていたのかな?でもまだ新しい感じだし、家建てたのかな?  いろいろ思い出しながらインターフォンを鳴らすと、すぐに貴ちゃんの声がして、ドアを開ける音が聞こえた。  そしてそっとドアから外を覗く貴ちゃん♪  俺は興奮して思わず大きな声を出してしまった。 「貴ちゃーん♡会いたかったよー♡」 「バカやろう!んな大声出すんじゃねぇ!」  慌てて外に出て来て俺を引っ張って家の中に入れてくれた。  部屋着姿の貴ちゃんだぁ♪大きな白のTシャツに黒地に縞模様のハーフサイズのジャージ。白くて細い足が見えてて可愛いなぁ♪ 「貴ちゃん♪ケーキ買って来たよ!見ながら食べよう♪」 「お、おう……てかお前に話があるんだけどよ」  あれぇ?何だかよそよそしいなぁ。まさか今まで俺の事を忘れてたの悪いと思ってるとか?  貴ちゃんらしくないけど、そこもまた可愛いな♪  思い出してくれただけで俺は嬉しいから気にしないけどね。 「何かな?」 「その前にブラックキングは持って来たのか?」  手を出しながらそう言った。  ふふ、本当に好きだねこのアニメが。  俺はじゃーんと紙袋から取り出して見せて渡してあげた。  すると、嬉しそうに笑ってとても喜んでいた。 「それ限定版だからいろいろ特典も付いてるんだよ。もう出回って無いから今後手に入らないんだ。俺もう一個持ってるからこれは貴ちゃんにあげるよ」 「いいのか!?」 「もちろん♪ねぇ、家の人はー?」 「母ちゃんならパートでいねぇよ。父ちゃんも仕事~。あ、リビングのデッカいテレビで見ようぜ!」 「うん♪お邪魔しまーす」  貴ちゃんのお母さんとは幼い頃に会った事がある。俺の事を覚えていてくれるかは分からないけど、俺は良く覚えている。あんなパンチのあるお母さんなんて見た事が無かったからね。  リビングに通されてソファに座ってると、グラスと麦茶の入った容器ごと持って既にお菓子が散乱しているテーブルの上に置いた。 「あ、ケーキ食うなら皿とフォークも必要だよな。今持ってくるわ」 「手伝うよ。ケーキたくさんあるから貴ちゃん好きなの選んで残りは家の人に食べてもらってよ」 「そうか?どれにしよっかな~♪」 「ふふ、貴ちゃんはどれを選ぶのかな~?」  ケーキが入った箱を開けて中を覗く貴ちゃんはまるであの頃のようでとても愛おしかった。  そして貴ちゃんが選んだのはチーズケーキ。絶対ショートケーキとかを選ぶかと思ってたからビックリした。 「俺これ~♪」 「え、貴ちゃんそれでいいの?こっちの生クリームたっぷりの方じゃなくて?」 「俺生クリームあんま好きじゃねぇんだよ。いっぱい食うと気持ち悪くなるんだ」 「そうだったの!?知らなくてごめん。今度からは違うの選ぶね!」 「別にいいよ。母ちゃんと父ちゃんは甘いの大好きだから喜ぶぜ♪」 「貴ちゃん……」 「おい銀髪~、早く皿取ってくれよ」 「…………」  貴ちゃんの笑顔を見ていたら何だか無性に悲しくなって来たよ。  嬉しいのに、長い間ずっと離れていたからかな。  やっと会えて嬉しい筈なのに、とても悲しくて、俺は泣きそうになった。  好きなケーキ、知らなかったから?  俺に気付いた貴ちゃんは、驚いて顔を覗き込んで来た。 「お、おい?どうした!?チーズケーキ食いたかったのか!?」 「ううん。貴ちゃんにね、会えて嬉しいの。もう思い出してくれないと思ってたから……思い出してくれてありがとう……」 「ん?……いや、別にいいけどよ?」  不思議そうな顔で見られて俺は気持ちを切り替える事に集中して、無理矢理笑顔を作って貴ちゃんに向けた。  すると貴ちゃんは険しい顔をして下を向いた。  今度は貴ちゃんがそんな顔をするなんて……  せっかくこうしてまた楽しく遊べてるのに…… 「貴ちゃん、ごめんね。許してくれないかな?」 「……それは、何に対しての謝罪だ?」 「何って、貴ちゃんに嫌な思いをさせたからだよ」 「本当に思ってるのかよ!?」 「え?……貴ちゃん?」  怒った顔をして俺を見て大きな声で言われた。  そんなに怒る事だったかな?  俺は意外な反応に少し考える。  そしてせっかく俺に気付いてくれた貴ちゃんの機嫌を損ねないように落ち着いて話すよう心がけた。  もう貴ちゃんに知らん顔されるのなんて嫌だ。  またあの頃みたいに仲良くしたい。  俺はその一心でいつものように頭の中をフル回転させていた。
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