紘夢!こらからは一緒にやろうな!

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紘夢!こらからは一緒にやろうな!

 それから紘夢は家に居座った。  別に一緒にアニメ見てるだけで変な事何もして来ねぇし、俺は特に何も考えずに一緒に過ごしていた。  その間に来るわ来るわみんなからの電話やメッセージ。俺はいつも返すのとか面倒くさいから寝る前とかに一気に確認して返して終わりにしてるんだ。  そうこうしている内に母ちゃんが帰って来た。  何でも紘夢は母ちゃんの事を知っているらしく、会いたいとか言ってんだ。  人の母ちゃんに会いたいとか変な奴とか思ってると、母ちゃんがリビングに入って来た。 「ただいま~っと!貴哉ー?玄関に知らない靴あったけど、友達来てんのー?」 「おかえりー」 「貴ちゃんママ!おかえりなさい♪お邪魔してます♪」 「はいただいまっと、にしてもまた凄い頭してる奴連れて来たね~!今度は銀色かい……ん?」  紘夢が母ちゃんに駆け寄って嬉しそうに声を掛けると、母ちゃんはいつも俺の友達に接するみたいに返した。  そして紘夢の顔をジーッと見て驚いた顔をしていた。 「あんた、もしかして紘夢か!?」 「覚えててくれたんですかー!?嬉しい~♪」 「マジかよ!?」  母ちゃん凄くね!?俺でも覚えてねぇのに、何で紘夢の事覚えてんの!?しかもちゃんと名前呼んでるし!   「覚えてるに決まってるだろー?可愛い息子の友達第一号だからな!いやー、久しぶりだね~。お坊ちゃんがそんな頭してていいのかよー?」 「やだなぁ~。俺もうお坊ちゃんじゃないんですよー。あ、それ冷蔵庫に入れますか?手伝います♪」 「おっ気がきくね~。貴哉とは大違いだ」 「ふんっだったら毎回紘夢にやってもらえばいいだろー」  紘夢は母ちゃんが持ってた買い物袋を受け取ってキッチンに運んでた。  紘夢の奴、母ちゃんに覚えててもらえたのが嬉しくて調子に乗ってやがんな?  ま、俺がやらなくて済んで助かったけどなー。 「貴哉ー?お風呂掃除したのか?」 「ゲッ!」 「ゲッじゃないよ!どうせ家にいてもダラダラしてばっかなんだから頼んだ事ぐらいはやっておきなって言ってるだろ!」 「い、今やってくるよ!」  やべー!すっかり忘れてたぜ!  俺は慌てて風呂場へ向かった。  キッチンの方では母ちゃんと紘夢の笑い声が聞こえて来た。  なんだよ二人して盛り上がりやがって!  紘夢の奴、父ちゃんにチクってやるからな!  そして俺は言われた通り風呂掃除を始める。  あー面倒くせー。でも母ちゃんに怒られる方がもっと面倒くせーからちゃんとやる。  今日の夕飯何かな?  紘夢も食ってくのかな?  俺と二人だけの時の母ちゃんの飯って惣菜とかばっかだから、それ見て紘夢がガッカリしたら面白ぇのに。 「貴ちゃん♪何でニヤニヤしてるの?」 「うわっ!ビックリした!」  いきなり紘夢に声を掛けられて驚いてると、脱衣所の方からクスクス笑う紘夢が俺を見ていた。  やべー、変なとこ見られちまったな。 「俺がいるのがそんなに嬉しい?」 「へ?あ、そーそー。だからニヤけてましたー」 「そんな貴ちゃんに朗報~♡俺、今日お泊まりする事になりました~♡貴ちゃんママが泊まってけって♪先に二人で風呂入れって♪」 「はぁ!?何勝手に決めてんだ!」 「えー、俺が泊まるのダメぇ?」 「そっちじゃねぇよ!泊まるのは別に構わねぇ!風呂は別だからな!」 「いいじゃーん♡貴ちゃんママに許可取ったもん♡」 「俺の許可が降りてねぇだろ!」 「じゃあ許可して下さい♪」 「ダメです!」 「貴哉!いつまで掃除してんの!早く終わらせて二人で風呂入っちゃいな!」 「ちょ、母ちゃんマジで言ってんのかよ!?俺ら高校生だぞ!」 「私からしたらいつまでも子供だよ!紘夢、着替えは貴哉に借りな?タオルは出しておくから」 「はーい♪貴ちゃーん!着替え取って来るから部屋入るねー」 「馬鹿!待てクソ!あー!どいつもこいつも!」  俺は二人の勝手な言い分に手も足も泡だらけですぐに浴槽から出られない自分がもどかしくてさっさと掃除を終わらせて、風呂自動ボタンを乱暴に押して、俺の部屋に向かった紘夢を追った。    どうして俺の周りは勝手な奴らばっかなんだ!  部屋のドアを開けると先に来てた紘夢はクローゼットを開けて俺の服を物色していた。   「あ、貴ちゃん、どれ貸してくれるー?」 「あーもうこれとこれでいいだろ!ふんっ」  俺は一番上にあった寝巻きを渡してやった。  嬉しそうに「ありがとう」と言う紘夢。  これ以上勝手な事しなきゃいいけど…… 「貴ちゃんの部屋って意外と綺麗にしてるんだね~。もっと散らかってるかと思ったよ」 「汚くすると母ちゃんに怒られるんだ」 「あ、このパソコンでいつもゲームしてるのー?」 「そうだよ……てかお前俺がゲームやってるの何で知ってるんだ?」 「え、だってたまに一緒にやってるじゃん♪」 「は?数馬達の事か?」 「俺とだよ♡」 「はぁ?何言ってんだよ?」 「今日もロムからメッセージ来たでしょ?返事無かったけど~」 「ロムって、まさかお前があの冒険家のロム!?」 「そうでーす♪俺が冒険家のロムでーす♪会いたかったですよブラックさん♡」 「えー!!まじでー!?」 「ヒロムのロムだよ。てか誰も気付かないんだね。俺はブラックキング、カズマ、ミナトって名前で貴哉達だってすぐに分かったよ」 「分かる訳ねぇだろ!てかお前もやってたんだな、あのゲーム」 「うん。ゲームとかやってみたかったんだよね。実家を出たと同時にやりたかった事全部やってるんだ。そしたらゲームは面白かったよ。だから今でもたまにやってる」 「ふーん。他には何をやったんだ?」 「あとは、ゲームセンターに行ってみたり、ファーストフードを食べたり、あ、自転車で隣町まで行ったりもした!凄く疲れたけど、車では通れない道とかもあって楽しかったな~」 「紘夢、お前……」  紘夢がやりたかった事は普段俺達が普通にしてる事だった。そんな当たり前の事をやってみて楽しかったって満足そうに嬉しそうに笑顔で話す紘夢を見ていたら何だか悲しくなって来た。  そうか、紘夢んちは厳しいからそういう俺達が普通にやる事も出来ずにいたんだよな。  そう考えたら紘夢も可哀想な奴じゃねぇか。  同じ年代で生まれて来たのにこんなに差があるなんて、俺は自分の事じゃねぇのに悔しくなった。 「あとねあとね、学校帰りにコンビニに寄って肉まん食べたり……あれ?貴ちゃん?どうしたのー?」 「紘夢!これからは一緒にやろうな!紘夢がやりてぇ事全部!やっていいんだからな!」  俺が紘夢の肩をガシッと掴んで言うと、紘夢は驚いた顔した後にフワッと嬉しそうに笑った。  いつものニヤッとした余裕そうな笑顔じゃなくて、もっとこう無邪気な感じの笑顔。  まるであの頃の紘夢みたいだった。 「ありがとう貴ちゃん♪これから楽しい事いろいろ教えてね♪」 「おう!任せとけ!あ、悪い事はちゃんと教えてやるからやるなよ?」 「はーい♡」  そして俺と紘夢は自然と二人で風呂に入った。
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