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DVDのお礼な
風呂から出た後、母ちゃんの作った夕飯を食って俺達は部屋でくつろいでた。
ベッドの横に前芽依が用意した布団を敷いてやった。
すると紘夢はすぐにそれに気付いて聞いて来た。
「あれ、コレって貴ちゃんちの布団?」
「今はな。何で?」
「いや、この布団ってうちで作ってるやつだなって。しかもこれ、最高級のやつ。軽量型で持ち運びにも便利なやつだったと思うけど」
「マジで!?実はそれ芽依が持って来た布団なんだよ……同じのがまだ下に五組あるんだけど……どうりで寝心地が良いわけだ……」
今度俺のベッドの布団とすり替えよう……
芽依の名前に反応した紘夢。そっか。兄妹だったな二人は。芽依が泊まりに来た事も知ってんのかな?
「なるほどね。だからバレたんだな」
「何が?」
「夏休み中に芽依が泊まりに来たでしょ?それ、父親にバレて今芽依は行動を制限されてるんだよ。芽依は女友達の家に泊まるとか嘘言ったらしいけど、こんな数の布団を用意させたら不審に思われて調べられるに決まってるのにね」
「芽依がそんな事になってんのか!?」
それは知らなかった。戸塚も何も言って無かったじゃねぇか!だからあんなにしつこい女の癖にあれから姿を見せなかった訳か……
なんか、ひでぇ事しちまったな……
「芽依の事で貴ちゃんが気に病む事はないよ。むしろ悪く思わなくちゃいけないのは俺でしょ。芽依に何もかも押し付けて出て来ちゃったんだからね」
「なぁ、芽依の事なんとかならねぇのか?あいつ、強引で気はつえーけど、悪い奴じゃねぇよ」
「随分芽依と仲良くなったんだね。春樹が引き合わせたみたいだけど、これは予想していなかったよ」
「芽依は初めは俺の事嫌ってたんだ。不良不良ってすげぇボロクソに言われたぜ。でも、芽依は俺達の事を知って普通にしてくれた。泊まりに来た時だって、男達がいる部屋には絶対入って来なかったし、母ちゃんと寝てたし。悪い奴じゃねぇよ」
「その不良ってのは俺から来てるんだと思う。俺と芽依は普通に仲が良かったんだ。芽依は俺の事を本当に慕ってくれていていつも紘夢お兄様って呼んで後を付いて来てたよ。でも俺がこんな風になって、見事に嫌われた。不良になったって」
「そっか。あ、だから戸塚が側にいるのか!」
「春樹?」
「戸塚がお前の代わりに芽依の側にいるんだろ?慕うってよりこき使われてる感じだけどな」
「ああ、春樹も芽依同様俺の事慕ってたからね。二人は従兄妹でありながら友達みたいな感じだよ。春樹はあまり感情を外に出さないから分かりづらいけど、芽依の事を心配してるんだと思う。全部俺のせいなんだ」
「そうかもな。でも紘夢も限界だったんだろ?大事なもん突き放してまで好きな事したかったんだろ。なら仕方ねぇよな」
俺はベッドに寝転がりながら天井を見る。
俺には兄弟とかいねぇからそこら辺の気持ちとかは分からねぇ。
でももし兄弟がいたとしたら、どんな関係になろうと心配だし、嫌いにはなれねぇと思うんだ。
きっと紘夢と芽依もそうだと思う。
「いつかちゃんと謝ればいいんじゃね?許してくんなくても、許してくれるまで謝ればいいじゃん」
「貴ちゃん……」
「お?泣いてんのか紘夢~」
紘夢からグスッと鼻を啜る音が聞こえて来た。
いつも余裕そうにフワフワしてる奴の泣き顔を見てやろうと横を見ると、ポロポロ涙を流していた。
「貴ちゃんは優しいね。そんな風に言ってくれるのは貴ちゃんだけだよ。俺、ずっと周りから腫れ物扱いされて来て、俺だけ違う生き物みたいに生きて来た。貴ちゃんだけは普通にしてくれて、俺を人間にしてくれるんだ。ありがとう貴ちゃん。本当に、ごめんね……」
「ばーか。そんなのお前だけじゃねぇよ。俺だって周りからヤンキーだの馬鹿だの言われて来たっつーの。ほら涙拭けよ」
俺がそこら辺にあったタオルを渡すと紘夢は照れたように笑って受け取った。
「あはは、泣いたのなんていつ振りだろ~。記憶にないぐらい泣いてなかったな~」
「お前が泣くなんてみんな驚くだろーな。でも内緒にしといてやるよ。DVDのお礼な」
「ありがとう。それと、芽依の事少し考えてみるよ。何とか出来ないか。貴ちゃんが心配してるからね」
「本当か!?さすが兄様~♪あ、俺も出来る事は協力するからな!」
「うん。ほんと貴ちゃんといると楽しいな~」
紘夢がして来た事は消える訳じゃねぇ。
だけど、これからちゃんとしていけば何とかなるんじゃねぇのかな。
俺と違って紘夢は頭良いんだから簡単に出来るだろ。
もし出来ないようなら力を貸すのは本当だ。
友達が困ってたら助ける。
そんで俺が困ってたら助けてもらう。
友達……ん?
あー!みんなからの連絡無視したままだった!
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