まぁほっぺにするぐらいならいいぜ?

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まぁほっぺにするぐらいならいいぜ?

 俺はみんなから来てたメッセージを読んだ。  まず空な! 「停学三日っていつからいつまでの事!?てか電話出て!」「貴哉寝てんの?出掛けてねぇよな?」「いつまで放置すんだよー!」  とかそんなのがスタンプ含めいっぱい来てた。メッセージの間に着信が山ほどあったのは言うまでもない。  俺はそれに対して一通だけ返しておいた。 「悪い。母ちゃんに頼まれて風呂掃除してた」  いつまでやってんだって突っ込まれそうだけど、嘘じゃねぇしな!  お次は伊織!  こいつからも電話やメッセージが多かった。 「先生から電話来た?俺の方には今さっき来て三日間の停学が決まった。少し電話出来ない?」  と空程じゃねぇけど、他にも「今何してる?」とか来てた。  伊織も三日間停学かー。俺と同じだな。  後は直登や数馬からも来てた。珍しく今日は茜からは来てなかった。  そして同じく自分のスマホを見てた紘夢が少し憂鬱そうに喋り始めた。 「あちゃー、葵くんから呼び出し来たよ。明日は来るのか?朝一生徒会室へ来い。ってさ、黒幕の件だろうね~」 「マジか。でも俺と一緒に行くんだろ?水曜日に行くって言っとけよ」 「うーん。やっぱり明日学校行こうかなって。葵くんとこにも俺一人で行こうかなって思ってる」 「大丈夫なのか?」 「多分ね。ちゃんとみんなにも謝るよ。貴ちゃん、応援しててくれる?」 「もちろんだ!なんかあったら電話しろ!すぐに行くから!」 「あはは、貴ちゃんは学校来れないでしょー?それにみんなからの電話だって出ないのに俺からの電話なんて出ないんじゃない?」 「寝てたら出られねぇけど……でもなるべく気付くようにしとく」 「うん。ありがとう♪ちょっと緊張するな~。貴ちゃん元気分けて~♡」 「はいはい。ほらよ」  頭を撫でてやると気持ち良さそうに笑ってた。  正直不安だ。紘夢がちゃんと謝れるのか。それをみんながどう捉えるのか。  変な方向に進まなきゃいいけどな。 「一回帰って準備してから行くから学校着くのは昼休みとかかな?謝ったら帰って来ちゃおうかなぁ」 「なぁ、お前と生徒会長ってどんな関係なんだ?」 「葵くん?どんなって……うーん。ビジネスパートナーかな?こんな状況になっちゃったし、葵くんの生徒会長としての任期はもうすぐ終わるしそれもなくなると思うけどね」 「ビジネスパートナー?」 「そう。俺は学校で好きな事をさせてもらう為にフォローしてくれる後ろ盾が欲しかった。葵くんは生徒会長である程度の事ならどうにでも出来ちゃうからね。葵くんは俺の知恵が欲しかった。自分でも何でも出来ちゃうんだけど、それ以上の味に仕上がるスパイスが欲しかったらしい。交換条件でお互い協力するって条件で組んでたんだ」 「そうだったのか。初めて二人を見た時くっ付いてたからデキてんのかと思ったぜ」 「ないない~!俺がこんなだから勘違いしてる人多いと思うけど、そんな事言ったら葵くんに怒られちゃうよ」 「生徒会長はいつも怒ってんじゃん。特に俺にはな!」 「あれでも葵くんは貴ちゃんの事気に入ってるんだよ。なんだかんだちゃんとやってたからね貴ちゃん♪」 「嘘だー!」 「分かりにくいんだよね葵くんは」  改めて聞くと二人の関係がなんとなく分かった気がする。だから紘夢は生き残って来れたし、生徒会長もかなりのやり手と言われる程になれたって訳か。   「ねー、貴ちゃん。ワガママ聞いて欲しいんだけど?」 「なんだよ?言ってみ」  紘夢は布団の上にちょこんと正座して上目遣いで見て来た。 「今日一緒に寝たいなぁって♡ダメかな?」 「……いいぜ」  いつもの俺なら即答で断ってたな。  だけど紘夢は明日頑張るし、少しぐらい言う事聞いてやってもいいかなって思ったんだ。 「いいの!?やったー♡」 「俺のベッドじゃ狭いから布団な♪」  とか言って、本当は寝心地の良いこの布団を使いたかったのもある♪  すぐに枕を持ってベッドから降りて下の布団に仰向けに横になると、紘夢がクスリと笑った。そして俺の隣に横になった。うつ伏せで顔だけ俺の方を向いていた。 「貴ちゃん♪」 「んー?」 「もう一個ワガママがあるんだ」 「今度は何だぁ?子守唄か?」  顔だけ紘夢に向けると、ニッコリ笑って自分の唇を指差した。 「キスしたいなぁ♡」 「何で?」 「したいから♡」 「ダメ!」 「えー!俺がしたい事していいんでしょー?一緒にやってくれるって言ったじゃん~」 「キスとかそう言うのは違ぇだろ!そう言うのは簡単にするもんじゃねぇの!」 「付き合ってないいーくん達とはするのに?」 「……お前これからも俺の事スパイに見張らせる気か?」 「しないしない。見張らなくてもこうしてまた友達になれて話せるようになったから必要なくなったもん♪」 「俺と伊織と空の事どこまで見てたか知らねぇけど、あの二人は特別なんだよ。それでもいいって側にいてくれる変人共だ」 「特別か~。じゃあ俺も特別に入れてよ♪元々貴ちゃんの友達一号なんだし、お願い♡」 「嫌だっての。これでも俺二人の事で悩んでんだから。このままじゃいけねぇなって。もう一人増えるとか勘弁してくれよ~」 「そっか~、貴ちゃんも大変だね~。じゃあこのワガママは我慢するねー」 「まぁほっぺにするぐらいならいいぜ?お前は友達一号だからな」 「ほんとー!?わーい♡」 「あ、この事二人には言うなよ?面倒くせーから」  紘夢は嬉しそうに笑って体ごと俺に寄ってチュッとほっぺにキスして来た。  紘夢はあの二人と違って聞き分けがいいからいいな。それに紘夢の笑顔を見てると懐かしく感じて暖かい気持ちになれるんだ。  頑張れよ紘夢。  お前なら上手くやれる。  俺は信じてるからな。  そして俺達はその後たわいもない会話を楽しんでから眠りについた。
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