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※「三匹の子豚」
※茜side
生徒会長と薗田さんの昼休みでの放送演説で、演劇部は大パニックだった。
薗田さんの突然の脚本を取り上げる宣言に、俺達演劇部、二年生は部長の元、二年E組の廊下に総揃いしていた。
「卯月!さっきの薗田さんの話、どういう事だよ!?」
「一回脚本変わってバタバタして、やっと落ち着いたと思ったのにどうなってんだよ!」
「みんな落ち着いてくれ!俺も知らなかったんだ!だから今から薗田さんに話を聞きに行こうと思っているところだ!」
部員達の苦情に部長の卯月は困ってる様子だった。どうやら薗田さんの単独での考えらしいな。
卯月の言う事に、部員達は「薗田さんは放送室だ!」と誰かが言ってみんな走って行った。
卯月もすぐに追おうとしていたから俺は止めた。
「待ってくれ。今の薗田さんには生徒会長がついている。大勢で行っても相手にされないかもしれない」
「じゃあ黙ってろって言うのー?一応二人は部長と副部長でしょー?」
小平に言われて少し考える。
この後の薗田さん達の行動を考えてみた。
多分、自分達の教室に戻るのは考えられない。二人でどこかで話しているか、次の行動に出るだろう。
「卯月、演説の後の生徒会長の次の行動と言えば?」
「は?なんだよそれ?何で生徒会長?」
「確か生徒会長は学校側に不純異性同性交遊の緩和を訴えていた。その後始末に行くだろう。と言う事は」
「職員室だー!」
「正確に言えば校長か教頭の所だろうな。生徒会長の性格だから確実な人を選ぶだろう。そして薗田さんも放送室を使ってああ言った事を謝罪すると思うんだ。よし、俺達は職員室へ行くぞ!」
「よーし!薗田さんを説得するぞー!」
俺達三人はみんなと違う方向へ走り出した。
職員室へ向かっている途中で授業が始まるチャイムが鳴った。卯月は教室へ戻ろうかと迷っていたが、結局俺達に付いて来た。
そして職員室へ入る。が、授業が始まっているからかガランとしていて誰も居なかった。
ここじゃないとなると、校長室か……
俺達は廊下に出て隣の校長室に行こうとした時、校長室の前で薗田さんと生徒会長が二人で話をしていた。
「薗田さんいたー!」
小平が指を指してそう言うと、俺達に気付いた二人が会話をやめて声を掛けてくれた。
「やあ三人揃って、僕を見付けていたのかい?」
「そうですよ!さっきの何ですか!?もー、演劇部は大騒ぎですよ!」
「ああ、新しい脚本を取りに来たのか。ほら、それならこれだよ。簡単な内容だからみんなならすぐに演じられると思うよ」
そう言って冷たい表情の薗田さんが出した脚本は、見て分かるぐらい薄っぺらい物で、表紙にある題名は「三匹の子豚」だった。
この人ふざけてるのか!?
俺の心の声を小平が代わりに言ってくれた。
「こんなの部員達が怒りますよ!」
「ふん、先に僕を怒らせたのは君達だろう。文化祭まで協力するとは言ったが、僕も忙しい身なんでね。後の事は卯月くん、頼んだよ」
「え、薗田さん……」
新しい脚本を渡された卯月は動揺しているようで、少し震えていた。
こんなの納得できない!
いくら薗田さんでもこれはあんまりだ!
俺はみんなより一歩前に出て真っ直ぐに薗田さんを見て言った。
「薗田さん。俺は貴方に憧れて演劇部に入りました。俺だけじゃない。薗田さんに憧れて入部した人は他にもたくさんいます。そんな薗田さんが最後にこんな無責任な形を取るなんて……俺はガッカリしました!」
「…………」
「ほう、言われてるぞ詩音」
生徒会長が薗田さんの横で笑っていたけど、そんなの構わずに俺は自分の思っている事を訴え続けた。
「今の演劇部は、助っ人の二人の事で揉めているのに更に火に油を注ぐような事をして、俺は薗田さんを許しません!脚本は俺達の物です!絶対に返しません!」
「二之宮……そ、そうです!みんな頑張って来たんだから、最後までやらせて下さい!」
「ふぅ、二之宮くん、どうやら一皮剥けたみたいだね。でも後一歩ってとこかな」
「誤魔化す気ですか?」
訳のわからない事を言われたので、俺は薗田さんを逃すまいと必死だった。
そんな俺に薗田さんはさっきまでの意地の悪い笑いじゃなくて、フワッといつもの優しい笑顔を向けた。
「二之宮くんは二人には戻って来て欲しい派なんだろ?でもほぼ全員が二人を外したがっている。そうだろう?」
「そうです」
「このまま行けば二人は外されるだろうね。僕としても二人にやってもらいたいんだよ。だから二之宮くん、この新しい脚本を俺からのプレゼントだと思って受け取ってくれないかな?君ならこれを上手く使ってくれると思っているよ」
「薗田さんっ!」
薗田さんはニッコリ笑って生徒会長と歩いて行ってしまった。
言いくるめられた気がしてすぐに追おうとしたけど、最後の薗田さんの言葉を考えて立ち止まった。
もしかして、薗田さんは……?
俺は卯月が握る新しい脚本を見て薗田さんが俺に伝えたかった事を考えてみた。
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